楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~(11) 最終回 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

「ごきげん」を選択する人生

この連載「楽生~楽に生きるを極めるヒント~」の初回で、「喜怒哀楽のすべてが大切」とお伝えし、感情を大切に、楽に生きるためのヒントを笑いの体操とともに紹介してきました。そして、いよいよ今回が最終回となります。

人生は、思い通りにならないことのほうが多いものです。嫌なニュース、将来への不安、老いていくからだ……。放っておけば、こころは勝手に「不機嫌」へと流れていきます。「ごきげん!」「絶好調!」と思えない日があるのは、自然なことです。無理に笑う必要はありません。喪失の悲しみを味わうことも、こころの回復には大切なプロセスです。それでも私は、「あえてごきげんを目指すこと」を提案します。

それは、自分自身の健康を守るためであり、こころの平和を取り戻すためでもあります。一人ひとりが自分を慈しみ、こころの平和を築くことができれば、その姿勢は周囲に伝わり、やがて人と人との関係をポジティブなものへと変えていく。そんな輪が広がっていくことで、もっと楽しく、笑いに満ちた世界になると、私は信じています。

この連載には、たくさんの声が寄せられました。92歳の方が「元気ポーズ」でこころのわだかまりが消え、病や介護の渦中にある方が「ハハハ」と声を出して日常を取り戻そうとしている。

前回、「ローマは一日にして成らず」というお話をしました。栄華を誇ったローマ帝国でさえ、繁栄のピークに至るまでには、長い年月を要しています。

私たちが毎日をごきげんに暮らすために大切なのも、環境ではなく「選択」なのです。大きな決断をする必要はありません。無理に前向きになることでも、嫌な感情を追い払うことでもない。ただ、「どうありたいか」に立ち戻ることです。

この連載では、笑うこと、姿勢、書くことなどを具体的に紹介してきました。どれも人生を劇的に変える方法ではありませんが、気持ちが揺れたり、落ち込んだりしたときに、自分を取り戻すための効果的な技術です。

「元気ポーズをしてみたら、こころのわだかまりが消えた」

「一分間のメモで、前に進める気がした」

そんな声が、その確かさを教えてくれました。

楽生とは、楽をして得をすることではありません。自分の人生に向き合い、行動することです。今日という一日を、ごきげんに生きることを、自分で選び続ける姿勢だと、私は考えています。

イラスト・みよし

私は現在、「笑いのスペシャリスト」として、教育、執筆、プロデュースなどの仕事に携わっています。しかし社会人としての第一歩は、建築設計者でした。人が笑顔になれる空間をつくりたい、そう考えての選択でした。今は設計の仕事からは大きく離れたように見えるかもしれませんが、「人が笑顔で生きられる場をつくる」という願いは、今も昔も変わっていません。

ありがたいことに、やりたいことに没頭しながら、67年間生きてくることができました。まず決め(意図し)、選択し、行動してきたことが、今日につながっているのだと思い、感謝の気持ちでいっぱいです。どうか、どんなにささやかなことでも、ご自身の選択を大切にしてください。

私は技術者を原点としています。そのため、楽に生きる、ごきげんに生きるための具体的な「技術」をお伝えしてきました。自分の脳を手懐(てなず)け、心身の状態を整える笑トレ。モヤモヤを言葉にして前向きな行動を促す『ゼロ秒思考』のA4メモ書き。そして紙面の都合で詳しくは触れられませんでしたが、脳のざわつきを鎮め、自分の感覚を磨く「瞑想(めいそう)」も、ぜひ日常に取り入れてみてください。

ある読者の方からの「デジタルが苦手なので、病院の待合室に持っていける本にしてほしい」という切実な声もいただきました。Wi-Fiの電波が届かない場所や心が最も不安に揺れる場所でこそ、この「技術」が必要なのだと感じています。

いつでも手元に置いて「ごきげん」の知恵を活用していただけるよう、私はこれからも歩みを進めます。一年間、本当にありがとうございました。また、お会いする日まで。(了)

今月の笑い

(クリックして動画再生)

アロハ笑い

YouTube「高田佳子の笑トレで楽生」で、笑いの体操の動画が見られます。

プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫県神戸市生まれ。日本笑いヨガ協会代表、一般社団法人笑いイノベーション学会理事長。早稲田大学非常勤講師。人が一生笑って生きられる環境づくりがライフワーク。40代で老年学修士号を取得し、2009年にインドで笑いヨガを学ぶ。介護予防・認知症予防・ストレスケアに役立つ「笑トレ」を提唱し、科学的知見をもとに心と体を軽やかにする生き方を発信している。

【あわせて読みたい――関連記事】
笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”