カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~ (11) 写真・マンガ・文 平田江津子

多様な人と共に生きる体験の大切さ
カズキは、難しいのではと言われていた旭川北高校(夜間定時制普通科)に無事合格し、「北高マル!」と言いながら、休むことなく毎日元気に登校しました。
私が初めて学校見学に訪れた日のこと。カズキは廊下に貼ってある授業の時間割を眺め、自分のロッカーから使う教科書を取り出しました。その時、終始カズキの隣にクラスメイトの女子二人が付き添っていました。休み時間には、前の席の子が後ろを振り向き、カズキと一緒に折り紙を折る姿もありました。英語の授業中、おうむ返しが得意なカズキが先生の後について英単語を正確に答えると、クラスメイトから拍手を受けていました。とても良い雰囲気にホッとしたものでした。

高校は支援員を募集し、受け入れ態勢をできる限り整えていきたいという意気込みでカズキを迎え入れてくださいました。授業も各教科担任がおのおののやり方で関わり、工夫を凝らしてくださいました。心配だった「評価」についても先生たちで話し合い、「平田和毅」オリジナルの基準を作ってくださったことには驚いたものです。担任の先生は、「何があっても想定内だと思っていますから」という懐の深いまなざしを向けてくださり、私自身もとても安心でした。
一方、カズキが反抗的な態度を示し、分かり合えずに先生たちを困らせてしまったこと、行き過ぎた行動で停学処分になったこともあり、たくさんの悩み事にも出合いました。泣いたり、笑ったり、冷や汗をかいたり……そんな4年間でした。
卒業式の日。うれしかったのは、卒業文集に「平田君へのメッセージ」というコーナーを見つけたことです。カズキはみんなのように卒業にあたってのメッセージを書くことができないから、とクラスメイトのアイデアだったと聞いて胸が熱くなりました。「平田君は間違いなくクラスの雰囲気を明るくしてくれていました」「同じクラスで楽しかったです」「いつも癒やしをありがとね!」「教室にいるとどこか安心できたのは君のおかげです」――こうした最後の言葉に重みを感じます。

卒業証書を手に、笑顔のカズキ。4年間、頑張りました!
定時制に入学する子のほとんどが、不登校であったと聞いています。「予期せぬ行動を起こす人の存在を認めていくということは、集団の緊張を緩めることにつながる」と伺ったことがあります。カズキの存在が、「クラスメイトにとって安心安全なメッセージとなって届いていたのかもしれない」と思うと、〝多様な人と共に生きる体験をする〟という、インクルーシブな学校環境をつくることがいかに大切であるかという確信を新たにするのです。
プロフィル

ひらた・えつこ 1973年、北海道生まれ。1男3女の母。立正佼成会旭川教会教務部長。障害のある子もない子も同じ場で学ぶインクルーシブ教育の普及を目指す地元の市民団体で、同団体代表である夫と二人三脚で取り組みを進めている。





