「カンタベリー大主教の引責辞職」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

カンタベリー大主教の引責辞職

英国国教会と聖公会(総信徒数・165カ国8500万人)の最高指導者であるジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教は11月12日、同教会のボランティアであったジョン・スミス弁護士による、英国とアフリカの教会での男性や子どもに対する性的、心理的、身体的な虐待への対応で責任を問われ、辞意を公表した。

スミス氏は、1970年代から教会で開催されてきたサマースクールで、約30人(英国)と85人(アフリカ)の男性や子どもに、“恐るべき犯罪”を継続してきたという。犯罪自体は80年代に発覚していたが、独立機関が遂行した調査結果に基づき警察に通報されたのは2013年になってからだった。

独立機関は、13年に就任したウェルビー・カンタベリー大主教が、スミス氏の犯罪について報告を受けながらも、警察への通告を怠り、教会内部でも必要な調査をしなかったと公表。以来、英国国教会の司教会議は、「教会聖職者の信頼を失った」との理由で、カンタベリー大主教の辞任を要求し、約1800人が署名運動に参加した。

ウェルビー大主教は当初、「必要な確固とした意志をもって対処しなかった」ことを認め、ジョン氏の犯した罪の大きさに驚きを表明しながらも、「辞職はしない」と明かしていた。しかし、12日には「国王の寛大なる認可を得て辞職する」と公表。声明文の中で、「私が、2013年から2024年にわたる愕然(がくぜん)とした期間に関し、個人的、公的に責任を負わなければならないことは明白」とし、犯罪の「犠牲者と生存者たちに対する苦痛」を表明した。

また、自身の決断によって、「英国国教会が安全な場所となっていくために改革が必要」とし、そのための強い努力を要望していることを理解してほしいと呼びかけた。そして、12年間の在位期間を通して教会内での虐待に対処する努力を続けてきたと主張した。しかし、「この数日間、かなり前から深く感じていた恥辱感が私の心の中に舞い戻ってきた」と明かし、「私の努力の評価は他の人々の判断に委ねる」と述べ、カンタベリー大主教の座を去っていった。

英国国教会と聖公会が参加する世界教会協議会(WCC)のジェリー・ピレー総幹事は、ウェルビー・カンタベリー大主教の辞任に際して声明文を公表。子どもたちへの虐待行為に対し、「沈黙を守り、責任を取り得なかった教会の状況にあって、個人的、公的に責任を取られた大主教の叡智(えいち)を信頼する」と述べ、虐待の被害者とその家族に心を寄せていると明かした。また、「英国国教会内部の指導権に関する困難な時」に際し、速やかに指導者が移行していくために祈ると約束した。

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