バチカンから見た世界(162) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(11)―恥ずべき国際社会と列強国の無能さ/教皇の糾弾―

ローマ教皇フランシスコ は10月 6日、バチカン広場での日曜日恒例の正午の祈りの機会に、「イスラエルの住民に対する(ハマスによる)攻撃から1年が経過した」と追憶し、「今でも、ガザには多くの拉致された人々が残っている」と心痛を表すとともに、「彼らの即刻なる釈放を要請」した。

あの日から中東が、「パレスチナ人を打撃する破壊的な軍事活動と共に、さらに重大なる苦しみへと陥落していった」と嘆く教皇は、ガザや他の地区で深く苦しむ人々の多くが「無実の一般市民であり、人道援助を必要としている」と指摘し、「あらゆる地域における即刻なる停戦」を訴えた。国際社会に対しては、「報復の渦に終止符を打ち、数日前にイランによって実行されたような、中東をさらなる戦争に突入させていく攻撃を継続しないように」とも呼びかけた。また、全ての国に「平和と安全のうちに存在する権利」があると主張。諸国の「領土が攻撃され、侵攻されることがないように」と願い、「国家の主権が、憎悪や戦争によってではなく、対話と和平によって尊重、保障されなければならない」と戒めた。その上で教皇は、「こうした状況では、以前にも増して、祈りが必要とされている」と説示。同日夕刻、「ローマ市内の聖母マリア大聖堂(サンタ・マリア・マジョーレ)でロザリオの祈りを捧げる集会を開き、中東 和平のために神の母なる聖母の取り次ぎを願う」と公表した。

また、同7日を「中東和平のために祈り、断食する日」とも定めた。ロザリオの祈りを捧げる集会で教皇は、「お母さん(聖母)、あなたの母性愛の眼を、平和の喜びを見失い、友愛の意味を喪失した人類に向けてください」と祈った。「不正義によって抑圧され、戦争によって破壊された時にあって、自身の愛する者、自身の子どもの死に泣く人たちの苦の顔面から涙を拭い、私たちの歩を暗くしてしまった生ぬるさから呼び覚まし、私たちの心から暴力という武器を取り除いてください」とも嘆願した。「危険に直面する現代世界」のために、聖母による神への取り次ぎを乞う教皇は、私たちに「生命を擁護、戦争を破棄させ、苦しむ人々、貧者、無防備の人々、病人、嘆く人々へのケアを忘れず、私たちに共通の家である地球を保全させてください」と要望。「憎悪を扇動する者の魂を改心させ、死をもたらす武器のごう音を沈黙させ、人間の心に忍び寄る暴力を消し、諸国家の指導者の行動に平和のプロジェクトに関するインスピレーションをお与えください」と祈った。このロザリオの祈りが、「利己主義を解消させ、悪の暗雲を遠ざけますように」と願い、祈りを結んだ。