西多摩教会青梅第三支部 感謝を胸に新たな布教へ

10月3日に閉所を迎える沢井連絡所。26年間、会員の布教を支え、人生を見守ってきた

東京・青梅市の多摩川沿いに立つ沢井連絡所は、立正佼成会西多摩教会青梅第三支部の布教拠点だ。久しぶりに晴れ間がのぞいた9月2日、連絡所で「感謝のご供養」が行われた。

「懐かしい!」と声を上げて連絡所に入ってきたのは、青梅第三支部の元支部長のOさん(87)。共に修行した仲間と肩を並べ、ご宝前に手を合わせると、「いろんな思い出がよみがえるね」と目を細めた。

昭和50年代に発足した青梅第三支部では、奥多摩方面への布教の広がりと会員数の増加に伴い、支部で集まれる拠点が求められた。当時、支部長の声がかかっていたOさんは、先輩幹部と共に農家や商店などを一軒一軒回って物件を探した。「なかなか見つからず困っていたら、ここの大家さんが快く貸してくれた。実際に中を見たらイメージ通りの間取りで驚きました」。平成10(1998)年に開所し、以来、26年間会員の布教を支えてきた。

多摩川沿いに立つ連絡所

連絡所のある青梅市から奥多摩、遠くは山梨との県境まで包括するのが奥多摩地区だ。受け持つのは主任歴9年のKさん(55)。Kさんが活動に出始めた頃は、奥多摩地区だけで数十世帯の会員がいた。連絡所だけでは足りず、地域ごとに法座を開いていたが、ここ数年で急速に高齢化が進んだという。「今は奥多摩と山梨に10軒だけになってしまったけど、待っているサンガがいる限り布教に出ます」。

奥多摩方面へ向かう布教は1日がかりだ

会員の高齢化に加えて、4年前から始まったコロナ禍により支部の活動が停滞。連絡所の護持もままならなくなった。Kさんを含む若手主任も育っているが、それぞれに家庭や仕事がある。教団から「衣がえ」の方針が出されたこともあり、現・支部長のAさん(58)は支部の役員らと話し合い、閉所を決断した。「お世話になった連絡所に感謝のご供養がしたいと思い、支部のみんなに呼びかけました」。

「感謝のご供養」は2日から8日の1週間、『法華三部経』全巻を読誦(どくじゅ)するもの。初日の2日はA支部長が導師をつとめ、青梅第三支部の会員やOさんら同支部にゆかりのある会員11人が集った。読経後、自然と法座が始まった。参加者それぞれが連絡所の思い出を語る中、Oさんは「うれしいこともつらいことも、この場所で、みんなで味わってきた。本当にありがたい、楽しい修行生活でした」と話し、「こことお別れするのは寂しい」と目を潤ませた。

『法華三部経』全巻を読誦した「感謝のご供養」には、連絡所にゆかりのあるサンガが大勢集った

鐘の役をつとめた若手主任のNさん(54)は、Oさんの言葉にうなずきながら、「私も先輩方に導いてもらい、ようやく自分の足で信仰の道を歩めるようになりました。今日は、この連絡所で学んだ南無妙法蓮華経の意味と感謝をかみしめてご供養をしました。連絡所がなくなっても、このお題目でサンガ(教えの仲間)の皆さんとつながっていきます」と力強く決意した。

沢井連絡所は10月3日、閉所式を迎える。連絡所がつないできた法縁を次の世代に渡すのが今後の使命だとA支部長は言う。「これからは私たち一人ひとりが『即是道場(そくぜどうじょう)』の精神で布教拠点となり、今の時代に沿った活動を行っていきます。終わりではなく新たなスタートです」。