バチカンから見た世界(159) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

G7でスピーチしたイタリアの政界、宗教界の指導者(2)

ローマ教皇フランシスコは6月14日、イタリア南部プーリア州で同国を議長国として開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)に、歴代教皇として初めて参加し、アフリカ、南米諸国、インドの首脳をも含む拡大会議で人工知能(AI)についてスピーチした。

昨年5月に広島で開かれたG7サミットでは、議長国の日本が、生成AIに関する初の包括的な国際合意「広島AIプロセス」をまとめた。G7にとっても、AIの規制問題は重要な議題となっている。

教皇は、神から人間に与えられた「創造能力」のなかでも、「AIは、魅惑的で恐ろしい道具」と評している。AIが、知へのアクセスの民主化、科学研究の画期的な発展、厳しい肉体労働の負担軽減などに貢献する一方、先進国と開発途上国、社会の支配層と被抑圧層との間により大きな不正義をもたらし、“出会いの文化”よりも“切り捨ての文化”が優先される危険性を指摘した。AIが、利益または害悪をもたらすかは「その使用方法による」というのだ。

さらに、教皇は人類史を振り返り、人間が発明した道具が、必ずしも「兄弟姉妹(人類)と共通の家(地球)への奉仕のために使用されなかった」と指摘。人間が自身の本質的な自由を乱用し、自身が存在する理由を「人類と地球の敵」に変貌させてしまったというのだ。