大聖堂で「降誕会」 庭野会長が法話 自らの尊さに気づき、日常生活を真剣に(動画あり)
「南無釈迦牟尼仏の御前(おんまえ)に 天童 舞いでて 申しあげたてまつる――」。稚児(ちご)総代を務めた佼成育子園の園児二人が「稚児讃歎(さんだん)文」を懸命に読み上げ、園児19人が桜花のついた小枝を両手に「きれいなお花」の曲に合わせて愛らしい遊戯を披露し、苦しむ衆生を救うためにこの世に生まれた釈尊の生誕をことほいだ。
零(こぼ)れ桜となった4月8日、立正佼成会の「降誕会」が大聖堂(東京・杉並区) で開催された。当日は、国内外の会員約1200人が参集。今年1月に発生した能登半島地震で被災した金沢教会からも32人が参拝し、横断幕を掲げて庭野日鑛会長と全国の会員に向けて復興支援への感謝を伝えた。
式典は、佼成箏曲部の優雅な序奏で開幕。釈尊降誕の意義をまとめた映像作品の上映後、読経供養が行われ、導師をつとめた庭野光祥次代会長が庭野会長の啓白文を奏上し、聖壇上に設置された花御堂(はなみどう)の誕生仏に甘茶を灌(そそ)いで供養した。
稚児総代の讃歎文奏上、園児による遊戯披露に続き、新宿教会の女性会員 (91)が体験説法。釈尊の母・摩耶(まや)夫人に関する研究の成果とともに信仰体験を発表した。
女性会員は、三女の難産を通し、『法華三部経』読誦(どくじゅ)に励んだことから仏、法への帰依心が生まれ、信仰に身を捧げることを決意。4人の子育て、家事、仕事をしながら佼成会のさまざまな役に就き、今も「新宿明るい社会づくりの会」の副会長を務めていると語った。大病を患ったこともあったが、「生きてお釈迦さまの生まれた場所に行きたい」という願いを支えに闘病したと明かした。
病から回復後、摩耶夫人の生き方を探究するため、インドやネパールを訪問。信仰深い同夫人の胎教と、夫人の妹である養母・摩訶波闍波提(まかはじゃはだい)の深い愛と祈りを込めた言葉かけが、人類救済への道を歩む釈尊を育てたと知り、その研究結果を上梓(じょうし)したことを紹介した。ネパールで英語版も出版され、ネパール大統領に喜ばれ、降誕会にルンビニーで大統領への贈呈式ができたと報告した。教えに出遇(であ)えたことにより、「豊かで素晴らしい日々を頂きました」と感謝を述べた。
この後、庭野会長が登壇。灌仏(かんぶつ)を行い、法話を述べた。庭野会長は冒頭、東井義雄氏の詩「誕生日」を披露。釈尊が、祖先からの長い命を受け継ぎ、人間としてこの世に生まれたことが「とても有り難いこと」と語った。
また、誕生偈(たんじょうげ)「天上天下(てんじょうてんげ) 唯我独尊(ゆいがどくそん) 三界皆苦(さんがいかいく) 吾当安此(がとうあんし)」の意味に言及し、この世は苦に満ちているが、「苦しみを苦しみでないようにするのが私の大願である」という釈尊の宣言だと説明。そうした釈尊の精神を『法華経』から受け取った庭野日敬開祖の教えに基づいて、本会会員は互いに精進をしていると述べた。その上で、人間は、仏の教えに出遇って初めて、持って生まれた自らの尊さに気づくことができ、他の全てのものの尊さにも気づくことができると強調。自分にも仏の心があると自覚することが最も大切と説いた。
さらに、『華厳経』の大家である坂本幸男氏は、仏が世に現れた理由を、「真実を説いて人々を教化し、一人残らず救わんがためであるという、一事(ひとこと)に尽きる」と解説したと紹介。「私たちも仏の教えによって救われたならば、やはり迷っている方々にもそれをお伝えするということが大事」と述べ、日常生活そのものを真剣に過ごしていくことが仏道修行であり、同時に、衆生救済の活動であると明示し、在家仏教徒としての心構えを伝えた。
この日、大聖堂3階正面階段前には花御堂が設置され、全国から訪れた参拝者が誕生仏に甘茶を灌ぎ、この世に生を享(う)け、教えに出遇えた感謝を捧げた。