バチカンから見た世界(140) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ウクライナ侵攻後の世界は分断されていくのか

現代史は、人類が戦争と破壊の廃墟(はいきょ)から立ち上がろうと「世界平和」を希求するたび、必ずと言っていいほど裏切られてきた道程といえる。

第二次世界大戦の終了後、国連や欧州統一思想に代表される多国間主義を通した世界平和の構築が試みられた。だが、世界は冷戦構造と核兵器の恐怖の時代に突入。1989年に冷戦が終結し、人々は世界平和の到来を再び期待したが、噴出してきたのは、米国同時多発テロ、文明の衝突、イスラームを名乗るテロ組織の攻撃に怯える世界だった。

イラクに対する軍事介入が二度実行され、ソ連の解体は欧米諸国に怨念を持つロシア政治指導者を誕生させる基盤となり、ウクライナ侵攻を予測、遠望させた。世界を一体化させたグローバリゼーションの崩壊した中で、一国家のアイデンティティーを強調し、民主主義の原則を操りながら自政権の延命を図る君主主義者たちが世界の半分を統治。欧米の民主主義圏と政治的、経済的、軍事的に対立するという構造が生まれた。

自然資源を含め、経済、技術、軍事力を駆使して世界制覇の野望をちらつかせる君主制国家と並行して、敵対関係なくして自らの存在理由を見いだせないポピュリズムも台頭してきた。多くの開発途上諸国が、世界を分断する対立構造の中で両者の間に挟まれ、どちらにも付かない「灰色の地帯」を構成している。

さらに、新型コロナウイルスの大流行は世界を「貧富」で分断し、そのさなかに、ロシアによるウクライナでの特別軍事作戦が開始された。ウクライナ侵攻後、世界はどうなっていくのだろうか。