「学林公開講座」 『世界宗教――キリスト教概論』と題し、西原立教大学総長が講義
世界の宗教指導者を講師に招き、各宗教の教義や信仰実践の核心を学ぶ、立正佼成会学林の「学林公開講座」が2月20日、オンラインで開催された。学林生、本会職員ら75人が参加した。当日は『世界宗教――キリスト教概論』と題し、日本聖公会中部教区主教の西原廉太立教大学総長が講義を行った。
第一部では、時代ごとに神学者が向き合った課題について解説。キリスト教は多神教文化が根強い時代に成立したことから、初期のキリスト教では、唯一の「神」と他の「神々」とを区別する教理の確立に力を入れていたと話した。また、キリスト教がローマ帝国の国教に定められてからは、公会議を経て教理の体系化が進む一方、『聖書』の解釈に違いが生じ始め、その後の諸教派の発生につながったと説明した。
第二部では、キリスト教と学問の関係について詳述。キリスト教では、神が『聖書』と「自然・宇宙・人体」を“テキスト”として書いたと考えられており、これらを読み解くため、「古典三語」(『聖書』が記されたヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語)と「自由七科」(文法、修辞法、論理学、天文学、幾何学、算術、音楽)が教養の基礎とされていることを紹介した。その上で、コペルニクスやニュートンら、自然科学の分野で優れた功績を残した人物の多くが、自らを神学者と称しているのは、彼らが「神の存在を証明し、神の創造の働きを賛美する」という使命感から研究を進めたからであると述べた。
最後の質疑応答で、信仰の原点について質問を受けた西原氏は、大学時代、在日韓国・朝鮮人が暮らす地域でのボランティア活動に携わる中で、「歴史的に、社会的に、彼らを差別する側の世界に生きていると自覚した」と吐露。その際に『聖書』と出遇(であ)い、「マイノリティーのために生きたイエスの生き方に影響されて、私はクリスチャンになった」と明かした。さらに、共に祈りをささげることで人とつながり、共感、共苦の心が培われたと強調。人々の見方を変え、生き方を変えるという力は「キリスト教に限らず、あらゆる宗教が持つ力」と語った。