「宗教施設への攻撃を非難するローマ教皇と国内の諸宗教指導者」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
宗教施設への攻撃を非難するローマ教皇と国内の諸宗教指導者
ミャンマー国軍は1月15日、同国北部サガイン地方のチャンター村にある、129年の歴史を有する由緒ある「被昇天の聖母教会」(カトリック教会マンダレー大司教区所属)を攻撃し、廃虚とした。ローマ教皇フランシスコは22日、日曜恒例であるバチカン広場での正午の祈りの席上、「ミャンマー国内で最も古く、重要な礼拝所の一つであった、チャンター村の『被昇天の聖母教会』が攻撃、破壊されたことに、苦痛を持って思いをはせる」と述べた。
また、多くの地域で厳しい試練にさらされている一般市民への連帯を表明。「ミャンマーの紛争が一刻も早く終結し、許しや愛と和平の新しい時が到来するよう神に祈ろう」と呼びかけ、自ら聖母の取り次ぎを願う祈りを先導した。
ミャンマーカトリック教会ヤンゴン大司教のチャールズ・ボー枢機卿、マンダレーのマルコ・ティンウィン大司教、タウンジーのバジリオ・アタイ大司教はこのほど、同国内の主要宗教と信仰を代表し、「平和の巡礼だ、皆で歩もう」と題する、熱意のこもった合同声明文を公表した。3人の大司教は、この数カ月間にミャンマー国内で「生命の聖性に対する大きな脅威が見受けられる。多くの命が失われ、避難を強いられ、飢餓で亡くなる人もいる」と指摘。「豊かな資源に恵まれた国で起きている人間生命の喪失は、慟哭(どうこく)の悲劇である」と糾弾した。
また、諸宗教共同体が平和と和解を追求してきた礼拝所や僧院が頻繁に攻撃されている状況に憂慮を表明。1899年に採択された「ハーグ陸戦条約」に言及しながら、同条約が、礼拝所、教育・医療施設を擁護するよう定めていることを訴えた。
ハーグ陸戦条約第27条には、「包囲や砲撃を行う時、宗教、技芸、学術、慈善の目的に使用されている建物、歴史上の記念建造物、病院、傷病者の収容所は、同時に軍事目的に使用されていない限り、これに対しなるべく損害を与えないために必要な一切の手段を取らなければならないものとする」と記載されている。ミャンマーは同条約に加盟していないが、国内の聖域が攻撃、破壊されている状況に対し、大司教たちは「なぜなのか?」と問い、国軍に条約を守るよう求めているのだ。国民間での癒やしと和解は、相互理解という深い絆によって実現されるもので、「礼拝所は、この相互依存を培う場」でもあると主張した。
そして、3人の大司教は、合同声明文の中で2回にわたり「ミャンマー国内の諸宗教と信仰伝統」を代表してと強調。「ミャンマーの全ての紛争当事者たちに対して伝える。国民はもう十分に苦しんだ。あらゆる武器の轟音(ごうおん)を停止させ、全ての人を兄弟姉妹と受けとめ、国と国民が一致して、聖なる平和の巡礼を開始しよう」と熱意を込めて呼びかけた。
ローマ教皇庁外国宣教会(PIME)の国際通信社「アジアニュース」は24日、人権擁護機関からの告発を紹介し、イスラエルのある企業がミャンマー国軍に電話の盗聴、SMS(ショートメッセージサービス)やEメール、ユーザーの位置情報などの探知に関する技術を提供したと伝え、「国軍は人類に対する犯罪を助長している」と報じた。このイスラエル企業とミャンマー国軍との契約は、2021年2月のクーデター直前に結ばれたという。
また、「国連薬物犯罪事務所」(UNODC)が公表した調査結果によると、ミャンマー東部にある“黄金の三角地帯”(シャン州)で、2022年にけしを原料とするヘロインの生産量が790トンに達し、倍増したとのことだ。今回の生産量は、過去9年間の最高値だという。
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