【思考の整理家®・鈴木進介さん】思考をシンプルにすることで、大切にすべきことを見いだして
目まぐるしく情報が行き交う現代だからこそ、「自らを見つめて思考を整理していくことが大切」と企業コンサルタントを務める、思考の整理家の鈴木進介氏はそう強調する。新型コロナウイルス、地球温暖化の影響が深刻化し、人工知能(AI)の導入、終身雇用の崩壊などで産業や社会の構造が大きく変動する中で、「大切にすべきことを見いだして自分らしく生きるためにも、それが必要」と訴える。独自の研究を重ねて、「難しい問題をやさしく解きほぐす思考の整理術」を体系化してきた鈴木氏に、「自分」を見失わない方法や苦境を乗り切る考え方を聞いた。
情報や知恵はあるはずなのに、なぜ行き詰まってしまうのか
――複雑化する現代において、「自分」を見失わないためには何が必要ですか
インターネットが普及して個人でも情報を発信できるようになり、便利になった半面、過剰な情報に踊らされるようにもなりました。関心や興味を引くように加工されているものや刺激のあるものも多く、本来、自分にあまり関係のない情報に、振り回されることが多くなっています。こうした本来意識を振り向けなくてもいい情報、振り向けたくない情報、いわゆる「ノイズ」が私たちをたくさん取り巻いているのが現代です。
ノイズは思考の邪魔になります。本来向かうべきこととは違う方向に誘導されてしまったり、間違った情報に振り回され、考えをねじ曲げられてしまったりもします。ノイズを取り除けば、自分が本当に大切にしたいことが分かり、物事の本質も見えてきます。そのためには、頭の中を整理する、思考をシンプルにすることが重要です。情報過多の時代には、このことが欠かせません。
――そう考えるに至った経験があるのですか
シンプルに思考する必要性を感じたのは、企業コンサルタントを行っていた時です。お客さまが困っていたことの一つは、問題解決の情報や知恵はあるはずなのに、対策に乗り出すと、なかなかうまくいかないというものでした。考えを整理できないまま行動を起こしていたことが原因で、多くの場合、途中で行き詰まっていたのです。
そこで、企業が持っている情報や考え方を整理して、シンプルに考えて取り組む手助けをしたら、問題解決への道筋がクリアになっていきました。情報や知恵はお持ちでしたから、思考の整理を手助けするだけで問題を解決するケースが多くあり、お客さまを通してその価値を見いだすことができたのです。
――組織だけでなく、個人にも当てはまりそうですね
はい、そうです。優秀で、努力している人はたくさんいますが、時間をかけているのに目標に届かずに、悪戦苦闘されている場合があります。情報がたくさんありますから、いろいろ手を出したくなるかもしれませんが、自分の目標やしたいことを明確にし、その達成に向けて必要なことは何か、自分が大切にしたいことは何かをシンプルに考えて、自分を信じてコツコツ取り組んでいくことが重要です。
思考を整理するには、まず不要なノイズをそぎ落とすことです。わき上がる感情も整理して、あれもこれもと欲張らない。その上で、努力する過程を整理してシンプルにし、一つ一つ取り組んでいくことをお勧めします。
私たちは、どうしても情報をたくさん集め、不要なスキルまで身につけようと足し算で物事を考えがちです。しかし、そうした感情を抑えて、物事や思考をシンプルに整理していく引き算を身につけてみてください。自分の本質や、目標達成のためにすべきことが明確になっていきます。
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