WCRP日本委 植松理事長名で「人身取引反対声明」を発表 政府に対し一層の対策求める (動画あり)
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は7月27日、植松誠理事長(日本聖公会主教)名による「人身取引反対声明」を発表した。政府や企業、市民に対し、人身取引の根絶に向けた行動を呼びかけるもの。同日、「人身取引防止タスクフォース」の宍野史生責任者(神道扶桑教管長)をはじめ同運営委員ら6人が、内閣府(東京・千代田区)を訪れ、森本敦司参事官に声明文を手渡した。その後の記者会見で同日本委は、森本参事官から、民間組織とも連携を深め根絶に取り組んでいく考えが示されたことを発表した。
人身取引とは、暴力、脅迫、誘拐、詐欺などの手段を用いて労働を強要する犯罪行為を指す。性的搾取、臓器売買なども含まれ、犠牲者は世界で4000万人を超えるといわれる。国際社会はこの問題に対し、2000年11月に国連で「国際組織犯罪防止条約人身取引議定書」を採択。人身取引を犯罪とすることを締約国に義務付け、その防止を図るもので、日本は17年に締結した。
WCRP/RfP日本委も、この重大な人権侵害をなくしていくため、昨年4月に「人身取引防止タスクフォース」を設置した。運営委員は会合を通じて実態の把握に努めるとともに、今年5月と7月に公開の「スタディーツアー(オンライン)」を開催。日本での外国人技能実習生に対する強制労働や人権侵害、アジアでの性的搾取の実態と、宗教者によるそれぞれの支援活動を伝え、啓発に取り組んできた。
今回発表された声明文は、政府や企業、市民に、解決に向けた行動を呼びかけるもの。政府に対しては、7月1日に米国務省が発表した「人身取引報告書2021」で、外国人技能実習制度下で起きている事象が労働搾取として問題視され、性産業での人権被害を含め政府の取り組みが「最低基準を満たしていない」と指摘されていることに触れ、さらなる対策を要請した。
また、日本社会に向けて、同実習制度における問題のほか、インターネットの映像や動画を含めた性的搾取で、世界で多くの子供が犠牲になっている現状を報告。人身取引の防止に加え、被害者の救出や尊厳の回復、加害者への対策強化の必要性を訴えた。
その上で、「重要なことは、人身取引は一部の特定の人物や団体が引き起こしているのではなく、私たち一人ひとりが、自覚的であれ、無自覚的であれ、加害者になりうる、加害者である、という当事者意識の醸成です」と強調。同日本委として今後、社会的認知を広める意識啓発、解決に向けた政府や国際機関、NGOとの連携、被害者への支援に積極的に取り組んでいくことを表明した。
その後、記者会見が行われた。この中で篠原祥哲事務局長が、一昨年に「和解の教育タスクフォース」のメンバーがフィリピンにある性的搾取の被害者の支援施設を訪れた際、「これは、先進国の問題」とその加害性を指摘され、認識を新たにしたことが人身取引防止タスクフォースを設置する一つの要因になったと説明。また、宍野師は、「人身取引」という言葉が商取引を連想させかねないが、「実態は人身売買」と強調し、重大な人権侵害であることを多くの人に伝え、根絶していく使命が宗教者にあると述べた。
WCRP/RfP日本委員会の「人身取引反対声明」(同日本委ウェブサイト)