WCRP日本委 オンラインでフィリピンの性的搾取の現状学ぶ

IJMのトゥパス氏とアレグレ氏は、オンラインでの子供の性的搾取の約6割が、親や親戚によるものと指摘した(「Zoom」の画面)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の人身取引防止タスクフォースによる「オンラインスタディーツアー~海外編~」が7月17日、ウェブ会議システムを使って開催された。5月23日の「日本編」に続くもので、今回のテーマは『性的搾取の最前線~フィリピンから学ぶ新たな人身取引~』。同フィリピン委員会が共催し、国内外の宗教者ら約120人が視聴した。

フィリピンでは、映像や画像による「オンラインでの子供の性的搾取」(OSEC)の被害が問題になっている。スタディーツアーは、同国の現状を知り、人身取引の防止の具体的な行動につなげていくために開かれた。

当日は、宍野史生・同タスクフォース責任者(神道扶桑教管長)の開会挨拶に続き、『性的搾取の問題の概要』について、フィリピンでその防止に取り組む人権団体「インターナショナル・ジャスティス・ミッション」(IJM)のマリー・ガールニー・グレン・トゥパス氏とアンディ・C・アレグレ氏が講演した。

両氏は、OSECの原因に言及。新型コロナウイルスの流行で経済が停滞し、失業や収入の減少でさらなる苦境に置かれた低所得者の親が、子供の性的な画像や動画を撮って売る事件が増加していると報告した。また、コロナ禍の中で児童や学生が自宅でオンライン授業を受け、インターネットを活用する機会が増えたことで、だまされて性的搾取に関する犯罪に巻き込まれるケースが増えていると指摘した。

その上で、OSECの問題を根本的に解決し、被害者をケアしていくには、社会的弱者に寄り添う宗教者の役割が必要であり、信仰を基盤とした組織(FBO)の協力が不可欠と強調した。その国際的なネットワークを生かして被害者の救出と回復に取り組み、犯罪をなくす啓発活動に努めることが重要と述べた。

続いて、『アフターケアと継続支援の紹介』と題するセッションでは、IJMのメラニー・オラニョ氏が、性的搾取の被害から救出された子供や若者がシェルターに入所し、自身の尊厳と健康を取り戻して社会復帰するまでのプロセスを詳述した。NGO「シーワークス・メイド・イン・ホープ」のミシェル・シェバ・トレンティーノ氏は、人身売買の被害を受けた女性への支援として生活向上と技能訓練の取り組みを説明した。

この後、フィリピンにおけるシェルターでの保護活動や被害者の証言を紹介する映像を配信。これを基に同タスクフォースのメンバーが現地の支援団体の代表者にインタビューした。この中で団体の代表は、子供たちには、教育機関と連携してインターネットの危険性を伝え、犯罪に巻き込まれないように努めていると説明。親に対しては、人身取引の問題の大きさを伝え、未然に防ぐ活動に取り組んでいると語った。