【認定NPO法人「FoE Japan」・深草亜悠美さん】豊かな環境を未来に残すため、私たちは一丸となって行動を
近年、記録的な猛暑や大型台風、豪雨などによる被害が国内外で拡大している。気候変動が被害拡大の一因といわれる。認定NPO法人「FoE Japan」では、気候変動を抑えるため、政府に持続可能なエネルギー政策への転換を求めるとともに、市民に環境保全の意識を持って生活する大切さを伝えている。6月は「環境月間」。FoE Japanの深草亜悠美さんに、気候変動の現状、地球温暖化を防ぐ取り組みについて聞いた。
開発へ環境破壊続けた末、短期間で平均気温が上昇
――気候変動による深刻な影響が現れていると聞きます
猛暑日が増加し、深刻な被害をもたらす集中豪雨も毎年のように発生しており、地球環境の変化を肌で感じる人は多いと思います。災害と気候変動の関係は科学的に証明されています。例えば、一昨年に日本を襲った台風15号、19号は勢力が衰えず、甚大な被害を及ぼしました。気象庁は、気温や海面水温の上昇が降水量の増加に繋(つな)がっていると発表しています。他にも、極地の氷床の融解による海面上昇、乾燥や高温による森林火災の増加など、さまざまな形で気候変動の影響が現れています。
人間社会に与える被害も深刻です。東南アジアや南アジアの国々でも台風やサイクロンによる影響が非常に大きく、毎年のように多くの死者が出ており、家屋の倒壊や農業、漁業への被害も甚大です。被災者が生活を再建する前に、新たな台風に見舞われる「災害の重層化」が起きています。いわゆる途上国では、経済的な制約や災害前から存在する貧困問題もあり、復興がより困難な課題になっています。先進国である日本ですらも、豪雨による河川の氾濫や土砂崩れによる被害が頻発し、回復には時間がかかっています。
気候変動による影響の拡大を抑えるためには、温室効果ガスの排出量を減らしていく必要があります。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、産業革命後からの急激な気温上昇は、人為的に大量に放出された温室効果ガスが要因であるとしています。現在の気候変動は太陽活動によるものとする意見もありますが、私たちが今直面している気候変動に関してはそのような意見は科学者によって否定されており、約100年という短期間で平均気温が約1度上昇するほどの温暖化は、人間がエネルギーを得るために化石燃料を燃やし続け、また開発のために環境破壊を進めた結果といえます。
2015年に成立した「パリ協定」(気候変動対策の国際ルール)では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度より低い状態に保ち、1.5度に抑える努力をするように定めています。しかし、地球の平均気温はすでに1度以上上昇しており、前述したような被害が各地で起きているのです。今、本気になって気候変動対策をしなければ、地球環境はさらに厳しくなっていくでしょう。
――日本の課題は?
日本の温室効果ガス排出量は世界第5位で、その要因の一つには、火力発電が発電量全体の約75%を占めていることが挙げられます。特に、日本には石炭火力発電所が160基以上あり、今も新規石炭火力発電所の建設が進んでいます。世界各国、特に、いわゆる先進国は気候変動対策のため「脱石炭」を進めていますが、日本では各国が石炭を減らそうとする中でも増やしてきたというのが実情です。
また、食生活も大きく関わっています。例えば食肉です。家畜の飼料となる大豆やトウモロコシは森を伐採して大量生産(プランテーション)されている場合が少なくありません。肉の加工、輸送にもたくさんのエネルギーが消費されています。
ファッションも気候変動と関わっています。服の原料である綿花の栽培から加工まで大量の水が使われます。服の生産国の中には、染色工場からの排水による水質汚染や、綿花栽培時に使われる農薬が健康問題に発展しているケースもあります。その上、国内では年間約10億枚の衣服が未使用のまま廃棄されています。
こうした悪循環の原因の一つには、経済成長ばかりを重視し、大量生産、大量消費を繰り返す社会の構造があるのではないでしょうか。日本を含む先進各国は経済発展の恩恵を受ける一方で、大量のエネルギーを使用して環境に負荷をかけ、気候変動を加速させています。そして、その負の影響を大きく受けるのは、温室効果ガスの排出量が少ない、いわゆる途上国の人々といえます。
こうした不平等を解決するために、「FoE Japan」では、気候正義という考え方を重視しています。気候変動への対策を通して、あらゆる人の人権を尊重し、地球環境を守る社会システムに変えていこうという取り組みです。構造が変化しなければ格差は解消されません。未来の人々に安全、安心な地球環境を残すためにも、私たちは一丸となって行動を起こすことが大切だと思います。
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