【特別インタビュー 第37回庭野平和賞受賞者 法輪師】 仏教への目覚め、真の平和を実現するために

法輪師 ©The Peace Foundation

「第37回庭野平和賞」贈呈式(公益財団法人・庭野平和財団主催)が10月26日にオンラインで行われ、韓国の在家仏教教団「浄土会」の創立者である法輪(ポンニュン)師に賞状、顕彰メダル、賞金2000万円が贈られた。法輪師は、仏教精神を基に世界各地で人道支援や環境保護の活動に取り組む。諸宗教者と協働して北朝鮮の人々への救援も続け、朝鮮半島の平和構築に貢献してきた。贈呈式の後、『仏教への目覚め、真の平和を実現するために』と題して、同財団の庭野浩士理事長(選名・統弘)が法輪師にインタビューした。その内容を紹介する。(文中敬称略)

困難を抱える人々のために、地道な支援重ね

庭野 韓国からの受賞は、キリスト教の牧師で、諸宗教対話の国際的リーダーとして知られた姜元龍(カン・ウォンヨン)博士(第17回受賞者)に続き、お二人目になります。

法輪 20代の時、姜先生が運営するクリスチャン・アカデミーの農民教育を受けました。当時の韓国には社会問題に取り組む仏教団体が少なく、姜先生のもとで社会正義を学んだのです。その後も朝鮮半島の平和をつくる「平和フォーラム」でご一緒し、長年活動を共にさせて頂きました。韓国では今、「クリスチャンの姜先生が取り組んだ平和活動を仏教徒の法輪が受け継いだ」といわれています。姜先生と同じ賞を頂き、光栄に感じています。

韓国と日本をオンラインでつなぎインタビューが行われた

庭野 法輪師は35歳の時に、「社会運動と仏教が一つになる時がきた」との思いで浄土会を創立されました。その後、国際NGOの「JTS(ジョイン・トゥゲザー・ソサエティ)」や北朝鮮の難民を支援する「グッドフレンズ」、環境保護に取り組む「エコブッダ」など、さまざまな組織を設立されました。こうした組織をつくられた願いとは何でしょうか。

法輪 最初からこうした団体をつくろうと計画したわけではなく、その時々の活動で必要になり、段々と増えていったというのが正直なところです。

1987年に韓国が民主化されて以降、労働運動は労働者が、農民運動は農民が行うようになりました。それまで社会運動に携わっていた私たち宗教者は、今後は何に取り組むべきかを考えました。私は、平和にとって重要なことが四点あると思いました。

一つは、地球規模で世界を見た時、環境問題があります。次に、人類を見渡すと、最低限度の生活を営むことさえできない絶対的貧困をなくさなければなりません。また、朝鮮半島では、戦争を防ぐために平和活動が必要です。一人ひとりに目を向けると、苦がなくなり、幸せに生きることが重要になります。これらを浄土会が取り組む活動の基盤にしたのです。

当初、北朝鮮の人々への支援には多くの批判がありました。北朝鮮に食料を届ければ、韓国の保守派が反対し、北朝鮮から中国に逃れた難民を支援すれば、進歩派と、北朝鮮政府が反対するといった状況でした。一つの団体で二つの活動を両立することが非常に困難になったため、人道支援を行うJTS、難民を支援するグッドフレンズと団体を分けたのです。南北関係が悪化した際に、国の方針や政策についての研究が必要になり、シンクタンクとして平和財団をつくりました。

庭野 北朝鮮での支援の現状はいかがですか。

庭野理事長

法輪 今年は新型コロナウイルスの影響で北朝鮮が国境を閉鎖したため、難民支援ができない状況が続いています。現在は韓国内に暮らす脱北者の定住支援を行っています。

人道支援を始めた20年前も今も、北朝鮮の人々の経済的な苦しさは変わりません。目に見える変化はないとの意見もあるかもしれませんが、支援を地道に重ねていくことが大事で、今後、劇的な変化が起こる可能性があると思います。

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