「飢餓と紛争の悪循環を断ち切るWFPにノーベル平和賞」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
飢餓と紛争の悪循環を断ち切るWFPにノーベル平和賞
ノルウェーのノーベル賞委員会は10月9日、今年のノーベル平和賞を「国連世界食糧計画」(国連WFP=本部・ローマ)に授与すると公表した。世界で飢餓の解消に取り組み、紛争地域での生活条件の向上に努め、飢餓に起因する紛争を予防したことが評価された。
国連WFPは2019年、88カ国の9700万人を対象に150億食分の食糧を搬送、提供してきた。特に、新型コロナウイルスの世界的な流行後、ロックダウン(都市封鎖)、国境の閉鎖、国内外のさまざまな規制といった困難な状況下で活動を展開。独自の国際輸送網を使った医療機器の搬送にも貢献した。
ノーベル賞委員会のレイスアンデルセン委員長は、「新型コロナウイルスに対する有効なワクチンが開発されるまで、食糧が世界の混沌(こんとん)とした状況を収める最良のワクチンだ」と発言した。さらに、「新型コロナウイルスそのものよりも、ロックダウンによる経済的影響によって、より多くの人の死を引き起こす」として世界に警告を発し、支援を要請していた国連WFPのデイビッド・ビーズリー事務局長の言葉を紹介。2030年までに世界から飢餓を解消するため、努力を続ける国連WFPの活動を称賛した。
また報道関係者に対し、「ノーベル賞委員会は、多国間主義が困難に直面している今、注意を喚起し、特に、新型コロナウイルス禍の世界で起きている貧困と飢餓の悪化という非常事態に焦点を当てる」と述べた。
「朝日新聞」電子版は同日、「国際協力を重要とみなさないポピュリズムやナショナリズムの傾向があるなかで、国際機関は支援を得るのに苦労している」という同委員長の発言を取り上げ、「国連を軽視して『自国優先』を掲げる米トランプ政権などを暗に牽制(けんせい)した」と報道している。米国はWFPへの拠出額が世界最大で、現在のビーズリー事務局長は共和党出身の元サウスカロライナ州知事であり、トランプ大統領によって指名されたことを考慮すると、今回のノーベル平和賞は、トランプ政権に対して多国間主義に関しての再考を促す、ノーベル賞委員会からのメッセージとも受け取れる。
ビーズリー事務局長は、「平和構築と飢餓の克服が同時に進行されなければならないという、強力な記録だ」とツイートして受賞を喜んだ。