気候変動非常事態と宗教者の役割 WCRP/RfP日本委員会によるオンラインシンポジウム開催

シンポジウムでの平和への祈り。「WCRPいのちの森」では小林氏(左)が祈りを捧げた

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会によるオンラインシンポジウム「気候変動非常事態と宗教者の役割」が10月16日に開催され、加盟教団の信徒や市民約180人が参加した。

同委員会は今年1月、世界各地で大規模な気象災害が起きていることを受け、「気候変動への非常事態宣言」を発表。危機感を持って環境問題の解決に取り組む決意を表明した。今回のシンポジウムは、同宣言に基づく取り組みの一つ。現在、生物全体にとって環境問題は「非常事態」のレベルにあるとの認識を深め、事態改善の方策を学び合うことを目的としている。

当日は、WCRP/RfP日本委気候危機タスクフォース責任者の薗田稔秩父神社宮司の開会あいさつに続き、山本良一・東京大学名誉教授が『気候非常事態宣言の潮流』をテーマに基調発題を行った。

気候変動の非常事態に警鐘を鳴らす山本氏

山本氏は、「気候と環境をめぐる状況は非常事態にあり、今後10年から20年のうちに大変な危機が訪れる可能性が高い」とする科学者たちの予測を紹介。早急に問題の解決を図らなければならないと強調した。

また、気候変動に対する危機意識の高まりを受け、世界で1700を超える国や自治体が「気候非常事態宣言」を表明し、環境保護の施策として、カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を同等にすることで、排出量を実質ゼロにすること)などの取り組みを打ち出している現状を説明。日本では宣言を出している自治体が少ない状況に触れ、宗教団体が社会への影響力を発揮し、自治体に宣言の発表を呼び掛けることに期待を寄せた。

この後、『気候危機における宗教者・宗教組織の取り組みの現状と課題』をテーマに、パネルディスカッションが行われた。一燈園の西田宗敬氏(燈影新エネルギー開発株式会社代表取締役社長)、天台宗総本山・比叡山延暦寺総務部の礒村良定主事、同日本委気候危機タスクフォースの小林恵太氏(カトリックアトンメントのフランシスコ会修道士)が各団体の環境保全活動を紹介した。

パネルディスカッションでは、三つの団体の代表から各団体での環境保全活動の紹介がなされた

この中で小林氏は、埼玉・所沢市にある「WCRPいのちの森」からインターネットで映像を配信して同日本委の活動を報告。2014年に行われた第8回アジア宗教者平和会議(ACRP)大会の「仁川(インチョン)宣言」で、「一人が毎年1本の木を植える」という環境保護の取り組みが提唱されたことを踏まえ、17年から「WCRPいのちの森プロジェクト」を始め、植樹を続けてきたと説明した。植樹された木々が成長した様子を映しながらプロジェクトの成果を発表した。

最後に、日本聖公会京都教区の高地敬主教が閉会のあいさつ。宗教者は万物が神仏に生かされていると謙虚に受けとめ、神仏の願いに沿って行動することが大切と述べた。