大衆扇動主義と人民主義の違い――コロナ後の世界に向け教皇が新回勅(2) 海外通信・バチカン支局
ローマ教皇フランシスコが10月3日、イタリア中部アッシジにある聖フランシスコの墓前で新回勅『すべての兄弟たち 友愛と社会的友情に関して』に署名した。
第3章から第5章までを紹介
新回勅の第3章では、開かれた世界を考え、生み出していくようにと訴え、そうした世界の実現に向けて、「“過激な個人主義というウイルス”を克服するための対話教育」を呼び掛けている。その中核として、「具体的に他者の善を望む善意」と、貧困や不平等の是正をイデオロギーではなく他者への奉仕によってなす「弱さに対する治癒の連帯」という二つの方法論を挙げた。
さらに教皇は、キリストが神でありながら、特権的な人生を求めず貧しい生活を送ったことに倣い、キリスト教は貧しい人の解放のためにあるとする「解放の神学」に基づき、三つの社会理念を主張する。
一つ目は、人権には国境がないがゆえに、生まれた場所にかかわらず、尊厳を持って生きる権利は誰も奪うことはできないし、いかなる人も排除されてはならないという原則。二つ目は、「国際関係の倫理」と呼ばれ、全ての国は(その国民だけでなく)外国人のものでもあり、国内にある善を、よそから来て必要としている人たちに拒否してはならないという人の道(倫理)だ。これは、難民や移民の受け入れや社会への同化を拒んではならないことを意味する。三つ目は、個人財産が自然権であるとの考えに関して、この権利は普遍的(地球レベル)な富の適正な配分という原則に従うという理念である。国の対外債務の返済は必要としながらも、それが「貧しい国の発展と存在を脅かしてはならない」と訴えている。
「全世界に向けて開かれた心」と題する第4章では、「戦争、迫害、自然災害、容赦しない人身取引業者たちから、故郷を追われて逃げる移民」の問題に言及。彼らを受け入れ、積極的に擁護し、社会に同化する取り組みを主張する。祖国で尊厳のある生活を送る可能性を生み出すことで移民の発生を防ぐよう訴えながらも、彼らが他国でより良い生活を求める権利も否定しない。移民の受け入れ国に対しては、「国民の権利の保障と、移民の受け入れや支援との間に、正しい均衡を保つように」と記している。
また、「重大な人道危機から逃げる人々(難民)」に対しては、ビザの迅速な発給と手続きの簡素化、「人道通路」という言葉を用いて、密航ではなく難民の合法的な移動ルートの開通、住居や基本的サービスの提供、雇用の可能性などを行うよう訴えている。さらに、世界各地で発生している移民、難民問題の解決には「世界レベルでの管理」が必要で、長期的な展望に基づく移民政策の国際協力の重要性を指摘した。各国が無償の原則に沿って連帯し、全ての人の発展に努めていけば、「人類一家族」を構成できると示した。