死刑執行に異議を唱える米国のキリスト教(海外通信・バチカン支局)

米連邦政府は7月14日、インディアナ州の連邦刑務所に収容されていたダニエル・ルイス・リー死刑囚(47)の刑を執行した。連邦政府による死刑執行は17年ぶりとなる。

トランプ大統領は昨年7月、停止されていた連邦政府レベルでの死刑執行を再開すると発表。犯罪に対する厳しい姿勢を示したが、その背景には、支持層へのアピールがあるとも報じられていた。今後、さらに3人の死刑囚の刑の執行が予定されている。

一方、カトリック司教を含む1000人を超えるキリスト教指導者たちはリー死刑囚の刑執行を前に、同大統領とウィリアム・バー司法長官に宛てて公開書簡を送付。この中で、「わが国は新型コロナウイルスの感染拡大、経済危機、組織的な人種差別と闘っている。司法組織もこれまで以上に、生命の擁護について意識していかなければならない」と表し、死刑の停止を要請していた。

米国のキリスト教諸教会の合同組織である「Christian Churches Together」のカルロス・マラヴェ事務局長は、「福音教会の指導者として、私たちの国が国民を再び殺し始めたことに心を引き裂かれる思いでいる。われわれはここ数カ月間、(同ウイルスによる感染症で)多くの死を目撃してきた。感染が拡大している時に死刑を執行することは、想像さえできない」と述べ、刑の執行を非難した。

また、イリノイ州ジョリエットのリチャード・ペイツ司教は、「カトリック教会は、正当な処罰がなされる必要性を信じているが、絶対に(容疑者の)希望と再生への可能性を排除してはならない。死刑の執行は、特有の根深い欠陥を抱えたまま、その腐敗したシステムを継続させてしまうものであって、個々の生命の尊重を訴える福音のメッセージに反する」と訴えている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)