新型コロナウイルスの終息を祈ろう――人類の友愛高等委員会が声明文(海外通信・バチカン支局)

「人類の友愛高等委員会」は5月2日、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて声明文を発表し、多くの人が生命の危機に直面している状況に触れながら、「私たちは創造主である神に向かって祈ることを忘れてはならない」と訴えた。この声明文はバチカン記者室からも公表された。

同委員会は、昨年2月にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで、ローマ教皇フランシスコとイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長が共に署名した「人類の友愛に関する文書」の精神を世界に広く伝え、その実現を果たすために活動している。昨年9月に発足した。

声明文では、終息には医療や科学の発展が重要になるとの考えを示しつつ、全ての人がそれぞれの宗教、信仰、教義に沿って、「新型コロナウイルスの世界的な流行を終息してくださるよう神に祈り、希(こいねが)い、断食すること」も同様に大切であり、人々が心を合わせていく必要性を強調した。

さらに、「人類の友愛に関する文書」が掲げた精神に沿い、5月14日を「人類のための祈り、断食、嘆願の日」とするよう、宗教指導者を含めた世界の人々に求めている。「神が、人類をこの苦難から救い、医師や科学者たちが根治的な治療法を確立し、医療、経済、人道の重大な危機から世界を解放してくださるように祈ろう」とも記している。

翌3日、教皇はバチカンでの正午の祈りの席上、祈りの普遍的な価値について説教し、同委員会の提案を紹介。その上で、「5月14日に全ての宗教が霊的に一致して祈り、断食し、愛徳を共に実践するよう呼び掛ける」と述べ、この取り組みを奨励した。

また4日には、バチカンの公式ウェブサイト「バチカンニュース」に、同委員会の委員長を務めるミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット枢機卿(バチカン諸宗教対話評議会議長)のインタビューの記事と音声が掲載された。この中で、アユソ枢機卿は、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が同委員会の提案に賛同していることを表明。「全ての人が(地球という)同じ船に乗っている」と述べ、諸宗教の指導者を中心に、人類が一つになって同ウイルス感染症の終息を祈る重要性を強調した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)