庭野平和財団 令和元年度の公募助成先発表 国内外12団体に1084万円

公益財団法人・庭野平和財団はこのほど、令和元年度の公募助成先を発表した。今年度は国内外の12団体に計1084万6232円が助成される(米ドルで拠出される金額は1月31日時点のレート1ドル=110.03円で概算。レートの変動に伴い円換算の額が変わるため、総額は参考値)。助成資金は、立正佼成会一食(いちじき)平和基金からの指定寄附によって賄われる。

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同財団の活動助成は、「宗教的精神に基づく社会・平和活動」「地域で展開される草の根活動」が対象。各国で排斥や対立が深まる国際情勢を踏まえ、前年度に続き、「分断された社会の中の対話と協力」を推進する活動に焦点が当てられた。昨年9月15日から10月15日までの募集期間に申請された221件の中から、海外8団体、国内4団体の事業が採択された。諸宗教間対話の促進や戦争の記憶の継承に関する事業が複数選ばれたほか、苦境にある女性や子供への支援事業が採択された。

このうち、1995年にイスラエルで設立された「保護者の輪のファミリーフォーラム」は、紛争で家族を失ったイスラエル人とパレスチナ人の遺族を引き合わせ、和解の活動を続けている。今回助成される事業では、イスラエルとパレスチナの高校で対話集会を実施し、双方の社会に蔓延(まんえん)する敵対心と閉塞(へいそく)感を払拭(ふっしょく)すると同時に、信頼醸成を図り、希望を育む。また、「ファシリテーター養成ワークショップ」を開き、不信を抱えた市民同士の対話を促進する人材の育成に取り組む。

米国でイスラーム、ユダヤ教に対する偏見の払拭に取り組む「ニューヨーク市イスラーム教徒とユダヤ教徒の連帯委員会」の活動も選ばれた。両信徒がシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)に集い、イスラームのラマダーン(断食月=日の出から日没まで飲食を絶ち、信仰を深める)を祝福し、日没後に互いの戒律に沿った食事を共にすることでコミュニティー同士の連帯を築く。

一方、「教育イニシアチブへの回帰」が活動するナイジェリア・タラバ州では、イスラーム系の遊牧民とキリスト教徒の地元農民との間で襲撃事件が起こるなど対立が激化している。今回の助成を受け、行政区内五つのコミュニティーで、双方の地域リーダーや宗教指導者、女性・青年のリーダーを対象に、対立や不信感を打開するための対話、多様性への理解、包摂の思想、全ての人の権利を尊重する民主主義の大切さなどを学ぶ研修やトレーニングを実施する。さらに、対立する問題の和解を目指し、当事者同士の討議や対話をサポートする。

国内では、宮城・石巻市を拠点に活動する「ワタママスマイル」による、東日本大震災によって分断された地域コミュニティーの再生事業を支援。助成金は、市民の交流の場として毎週開かれる「渡波(わたのは)地域食堂」、不登校や家庭内暴力などの問題を抱えた子供たちへの支援、住民の共助を育む「渡波よろず相談室」などに活用される。