年頭法話 立正佼成会会長 庭野日鑛
尋常(つね日ごろをたずねる)
WCRPが創設から五十年の節目 開祖さまの願いを顧み、深い感慨
「令和」の時代に入り、初めての新年を迎えました。それぞれ、心に期すものがあるのではないかと思います。
昨年は、台風十五号、十九号などの自然災害が相次ぎ、多くの方々が犠牲になられました。家屋や農地に被害を受けた方、停電や断水によって不便な生活を強いられた方、いまだに生活再建のめどが立たない人も大勢おられます。改めてご冥福をお祈りし、お見舞いを申し上げます。
日本は、自然災害が多発する国です。一人ひとりが、これまでの経験を生かし、万一に備える知恵を身につけることが不可欠であると思います。自助(防災用品を揃=そろ=えたり、地域の危険度を調べたりすること)、共助(身近な人同士が助け合うこと)の両方を大切にして、被害を最小限にとどめる取り組みを積み重ねたいものです。
特に最近の自然災害は、世界的な地球温暖化の影響を受けて深刻化しています。こうした気候変動は、人間の活動によって引き起こされている可能性が極めて高いと言われています。日本は、豊かさの中で、過剰生産、過剰消費・廃棄を続けてきました。これまでの価値観を大きく見直す転換点を迎えていると思います。
一方、昨年は、ドイツでWCRP(世界宗教者平和会議)の十回目となる世界大会が開かれました。そして本年、WCRPは創設から五十年の節目を迎えます。WCRPの創設と発展は、開祖さまの大きな願いでした。その歩みが半世紀もの時を経たことに深い感慨(かんがい)を覚えます。
今大会は、ドイツ外務省の受け入れ、協力によって行われました。宗教者に限られた世界大会ではなく、年々、各国の政府、国連などとの連携が強まり、広がりを見せています。開祖さまはじめ、多くの先達(せんだつ)の方々も、きっと喜んでおられるに違いありません。
世界大会の期間中には、大聖堂はじめ、全国の各教会で、会員の皆さまが祈願供養をしてくださいました。私自身、皆さまの思いを胸に、世界大会に臨(のぞ)ませて頂きました。
平和を実現するには、国際的かつ専門的な議論や活動が必要なことは事実です。しかし根本(こんぽん)は、それぞれの国や地域、家庭に平和を築くことです。それにはまず家庭の中で、宗教に基づく平和な心、人間性を養っていかなければなりません。日々の信仰生活が、平和に直結していることを、いま一度、確認し合いたいものです。
さらに今年七、八月には、二度目の東京オリンピックが開かれ、海外から大勢の人々が来日します。東京はもちろんのこと、全国各地を訪れる外国人の旅行者数は、年間で三千万人とも、四千万人とも言われています。そうした方々に、日本の良さをお伝えできるよう、明るく、優しく、温かい心で触れ合い、できる限りのお手伝いをさせて頂きましょう。