WCRP/RfP 第10回世界大会 プログラムから
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)の第10回世界大会で行われた全体会議(I~IV)、分科会、特別セッション、宗教別会合、地域別会合などの内容を紹介する。
(写真提供=WCRP/RfP日本委員会)
全体会議 紛争、差別、環境問題など世界の課題解決へ
大会では8月20日から23日まで、『つながりあういのち』を共通テーマに掲げ、紛争や貧困、社会的性差による差別、環境問題などの世界の課題を話し合う全体会議が連日開かれた。席上、解決に取り組む宗教者、元首脳や政府関係者、国連の上級代表、NGOの代表が講演した。
20日午後の全体会議Iは『積極的平和における諸宗教によるビジョン』について議論。発題者の欧州委員会会長のトマス・ウィプフ博士が、平和とは戦争のない状態(消極的平和)だけではないとし、貧困や抑圧、差別といった社会構造による暴力のない状況(積極的平和)、さらに心の平安を実感できる環境を築いていく大切さを主張した。パネリストの一人である東ティモールのジョゼ・ラモス・ホルタ元大統領(ノーベル平和賞受賞者)は、同国の独立後にインドネシアに復讐(ふくしゅう)しないと決め、赦(ゆる)しと和解に努めた経験と、安定を築くための政治的リーダーシップの必要性について詳述した。
全体会議IIでは『戦争やテロ等の紛争を予防し転換する』と題して行われ、ミャンマー委員会とナイジェリアの宗教者が自国の紛争や対立に触れ、諸宗教者による平和構築の取り組みを発表した。同委員会顧問のカトリックのチャールズ・ボー枢機卿は、同委員会が国際委員会の協力を得てラカイン州に足を運ぶなどしながら、ロヒンギャ難民の問題解決にあたってきた経緯を説明。貧困や教育の欠如、自然の乱開発といった紛争の原因を探ることも宗教者の役割と述べ、「宗教指導者が手をつなぎ、平和に向けて共に歩んでいきたい」と語った。
一方、ナイジェリアのジョン・オナイエケン枢機卿は、過激派組織「ボコ・ハラム」の暴力によりカトリックとイスラームとの共生に問題が生じたが、諸宗教指導者が結束を強め、信者と直接関わる宗教者への教育などを通して社会の回復に尽くしていると話した。
全体会議IIIは、『公正で調和のある社会を促進する』をテーマに開かれ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のドミニク・バルチェ代表が発題に立った。バルチェ氏は冒頭、どの宗教の教義にも他者を受け入れ、寄り添う大切さが説かれていると指摘。難民の保護について、人種や文化、思想の違いを超えて協力する諸宗教ネットワークの役割が重要と強調した。
また、難民対策には、紛争が生じる前に対話・和解を行う「予防」、国を離れた後の難民申請の準備と生活基盤の整備といった「保護」、祖国で平和的に暮らす環境を整える「帰還」の三段階があると説明。人間の尊厳を重視し、国家間の連帯を強めて対応していくことが必要と訴えた。このほか、女性への暴力の撲滅と被害者の救済、武装組織の暴力に対するウガンダにおける諸宗教者の対話・協力の取り組みが説明された。
『持続可能な総合的人間開発を促進し地球を守る』と題して行われた全体会議IVでは、人類の食料とエネルギー需要の増加に起因する自然破壊によって、100万種の動植物が絶滅の危機にある現状が報告された。特に多くの生物が生息する熱帯雨林の破壊が進み、そこで暮らす先住民の権利が侵されており、これらへの取り組みは急務であるとの意見が示され、地球を守ることは宗教者の責務であるとの考えで一致した。
なお、全体会議の各回で、宗教者の行動の指針となる「アクションポイント」が示され、紛争後の赦しと和解、核兵器の廃絶、「徳」による同盟、熱帯雨林の保護が、宗教者が取り組むべき「共通の行動」として採用された。