「教皇と内容のある、興味深い懇談ができた」とプーチン露大統領(海外通信・バチカン支局)
ロシアのプーチン大統領は7月4日、バチカンを訪れ、ローマ教皇フランシスコと約1時間にわたって会談した。
両指導者のバチカンでの会談は、今回で3回目。プーチン大統領は、教皇ヨハネ・パウロ二世とは2000年と03年に、現名誉教皇のベネディクト十六世とは07年に懇談している。現教皇とプーチン大統領の最初の会談は13年で、約35分にわたったその中心は、「シリア紛争の平和的解決に関する具体的な取り組み」についてだった。15年の2回目の会談では、「ウクライナ紛争、シリアとイラクを含む中東情勢」が話題となった。
今回の会談後に公表されたバチカンの公式声明文では、バチカン教皇庁の小児科病院「バンビーノ・ジェス」(幼きイエス・キリスト)とロシアの小児科病院の間で協約が結ばれたことによって、両国間の関係が進展したと伝えられ、両指導者が「環境問題と国際情勢の現状、特に、シリア、ウクライナ、ベネズエラでの状況について話し合った」と明かしている。シリア、ウクライナ、ベネズエラの3国はいずれも紛争状態にあり、ロシアが強い影響力を行使する国だ。3回にわたる両指導者の会談テーマの変遷から、環境問題という世界レベルでの危機が高まっていることに加え、世界で紛争地が一つずつ増えているという国際情勢の悪化が見て取れる。
会談後に、「時間を割いて頂き、ありがとうございます。内容のある、興味深い懇談ができました」と感謝の意を口にするプーチン大統領。これに対し、教皇は、「今日の日付で署名しました」と言い、2019年度の世界平和祈願日(カトリック教会では毎年元日に施行される)に向けて自身が公表したメッセージと、彼が今年2月にアラブ首長国連邦(UAE)アブダビでイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長と共に署名した「人類の友愛に関する文書」を贈呈した。
教皇フランシスコのモスクワ訪問は、今回の話題には上らなかったようだ。現教皇のモスクワ訪問に関しては、ロシア正教会が認可していないために大統領も招待できないでいる、といわれる。プーチン大統領は教皇との会談後に、バチカン国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿、同長官のもとに置かれた外務局の局長であるポール・リチャード・ギャラガー大司教と懇談した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)