作家・石井光太氏 『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』発刊

本紙連載「現代を見つめて」の著者である、作家・石井光太氏の『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』(平凡社新書)がこのほど発刊されました。

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虐待を受けた少年が事件を引き起こす割合が高い。この傾向は、統計上でも明らかになっていると著者は記す。本書は、少年事件を追う中で少年たちの心をつかみかねていた著者の、「なぜ犯した罪と向き合おうとしないのか。なぜ自分のいのちさえ大切にできないのか」という疑問を基に、少年たちの生い立ちを丹念に取材し、彼らの「心が壊れた」原因を探ったルポルタージュだ。

犯罪に手を染める少年や少女たちの中には、最も身近である親から愛情を得られないばかりか、虐待や劣悪な環境での生活を強いられ、精神的苦痛を受けてきた子供が少なくない。そうした反動は、他に対する暴力行為や自傷行為として現れる。自尊感情が育まれず、自己否定の感情がひときわ強いのが特徴で、それゆえに、ひとたび道を外れると、心の抑えが利かずに踏みとどまることは難しい。例えば薬物に手を出せば、一人で断ち切ることは困難になる。また、家庭に居場所がないために、性非行、詐欺、窃盗に走り、事態が深刻化していくケースが多い。著者は少年や少女たちに話を聞き、被害者だった彼らが加害者となるまでの背景を明らかにしていく。

一方、本書では、少年たちが犯した事件の被害者遺族にも話を聞いている。そこから感じるのは、反省なき少年たちの姿に接した遺族の悲痛の大きさとともに、恐怖すら覚える少年たちの「心の闇」の深さだ。

少年・少女が心を取り戻すにはどうすればいいのか――。その答えを探すことが、底の抜けた社会をもう一度つくり直す土台になる。著者は、彼らを支える人々にも取材し、その交流から希望も見いだしている。

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『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』
石井光太著
平凡社新書
1600円(税別)

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