紛争地域での平和構築とは WCRP/RfP日本委がフィリピンで「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会・和解の教育タスクフォースによる「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」が9月3日から8日まで、フィリピンで開催された。立正佼成会の庭野光祥次代会長(同日本委理事)を含む和解の教育タスクフォース運営委員の宗教者をはじめ研究者、学生19人が参加した。滞在中、一行は40年以上にわたり紛争が続くミンダナオ島を訪れ、紛争和解と平和構築に取り組むNGO職員や宗教者から対話の技法や心構え、諸宗教対話の重要性を学んだ。
「ファシリテーター」とは、中立的な立場から人々の意見を引き出しながら、問題解決や合意形成、学習などを支援し、それらを促進する人のことで、「調整役」「促進者」と訳される。このセミナーは、日常生活で生じる問題から国際レベルにおける紛争まで、さまざまな対立に和解をもたらす人材の育成を目的に、昨年7月に始まった。これまで『違いをみつめる』『見方をかえる』『他者をうけいれる』『つながる/つなげる』などをテーマに、日本国内でワークショップを行ってきた。
第7回となる今回のテーマは『外へふみだす』。一行は4、5の両日、キリスト教徒が9割を占めるフィリピンの中でムスリム(イスラーム教徒)や先住民が多く暮らすミンダナオ島を訪れた。
同島はフィリピンで最も貧しい地域の一つ。16世紀以降のスペインによる占領、日本の軍政統治、米国の再占領を経て1946年に同国が独立した後、中央政府が島へのキリスト教徒の入植政策を進めた。以前から暮らすムスリムや先住民は土地を奪われ、差別や搾取に苦しんできた。
72年、ムスリムの一部が島南部の独立を目指す組織を結成し、武力闘争に発展。その後、新たな反政府勢力の台頭で紛争は複雑化し、これまでに十数万人が死亡、200万人以上が避難民になったとされる。今年7月、ミンダナオ和平を公約に掲げていたドゥテルテ大統領が、ムスリムの自治を認める「バンサモロ基本法」を成立させ、和平への期待が高まっている。
4日、参加者は、MPIで活動する修道士のカール・ギャスパー師から、外国の占領や統治を受けたミンダナオ島の歴史を学んだ。
この後、キリスト教徒とムスリムの子供たちの交流や避難民の心のケア、地域開発などに取り組むカトリック・リリーフ・サービス(CRS)のオルソン・シャルガド所長から、対立の背景やファシリテーターの役割について話を聞いた。
この中でシャルガド所長は、ミンダナオ紛争は、宗教の対立と理解されているが、ムスリムや先住民の土地を搾取するといった不公正な地域開発や貧富の格差などの社会問題も大きな要因と指摘した。その上で、苦しむ人々の声を行政に届けるため、CRSでは行政と市民社会の橋渡し役に徹し、支援を必要とする人々と信頼関係を結びながら、政府関係者、宗教指導者、武装勢力のリーダー、教育機関との関係づくりに尽くしていると説明。多岐にわたる関係の構築が、ファシリテーターには求められると語った。