TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・小倉清澄さん Vol.3
東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)に入団して33年目を迎える小倉清澄さん。楽団の今昔を知る数少ない楽団員の一人だ。時代とともにTKWOはどのように変化してきたのか。そして、次世代の演奏家の育成に力を注ぐ小倉さんに、子供たちに向き合う上で大切にしていること、吹奏楽に取り組む青少年に向けたメッセージを伺った。
対話によってつくられる演奏
――小倉さんの入団した頃と現在とで、楽団はどのように変化したと感じますか?
約30年前の僕らは、指揮者とけんかはするし、練習中にメンバー同士で怒鳴り合うようなこともありました。皆、血の気が多かったですね(笑)。だからもう、すぐ口に出して、行動にも出て。「あの人、頭から湯気が出ている」といわれる人もいたぐらいですから。今はそんなことはありませんよ。
今も昔も変わらないのは、演奏会に向けたリハーサルの時間の長さです。練習時間は変わらないものの、その中身が変わりましたね。今は、指揮者の楽譜を読む能力がとても高いという印象があります。吹奏楽は独特の世界ですから、たとえ管弦楽団のスペシャリストと評される指揮者であっても、吹奏楽団でタクトを振る場合に同じような力が発揮できるとは限りません。ですから当時は、しっかりと言葉で対話をしていく必要があったのだと思います。
そんな当時と比べて今は、指揮者と楽団員の対話を基にした練習というよりも、指揮者がしっかりと作品の世界観を自らつくりあげてきて、メンバーに伝えていくような練習と言えます。その上で、僕らが出した音から、指揮者が感じ、それをうまく作品に生かすようにして、演奏自体を深めていくようになりました。練習は、かつてほど言葉が要らない、音楽的な対話の場に変わったという印象があります。
――小学生から大学生まで音楽を教えるという立場で、青少年育成にも尽力されていますが、どのような気持ちで携わっているのでしょう?
目の前にいる子が数年後、日本で一番上手な演奏家になる可能性はゼロではないと考えて、指導しています。だから、その可能性をつぶすようなことを大人は絶対にしてはいけないと肝に銘じています。時々、指導する側の人から、「私が教えているのだから、こんなもんだよ」と平気で言う人がいますが、僕は憤りますね。どんな子だって、<俺が教えるんだから絶対にうまくなる!>と思って指導しなければ、むしろ相手に対して失礼だと思います。
ただ、楽器や音楽を教える際、僕は、音楽に関係はあるけれど、極めて生活に近い話題で音楽を語ることを心がけています。例えば、楽譜について話す時は、これがイタリアで生まれたもので、基本的にイタリア語で表記されていることを説明します。