TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・秋田孝訓さん Vol.2

クリエイティブな演奏よりも、誰かの要求に応え、管楽器と共に演奏する吹奏楽の道を選んだ秋田孝訓さん。今回は、打楽器奏者としてのこだわりやジレンマを聞いた。

「寄せること」と「自分を失わないこと」

――打楽器奏者としてのこだわりはありますか

2点あります。1点目は、リズムや音、心を「寄せる」ということです。実際の演奏では、他の楽器の演奏をよく聴き、管楽器や弦楽器が奏でるフレーズや奏者の息遣いを意識しながら、それにタイミングを合わせたリズムと溶け込むような音の表現を心がけています。特にメロディックなリズムを担当することの多いスネアドラムだからこそですが、打楽器の中でも太鼓には音階はないものの、管楽器や弦楽器が奏でるフレーズをリズムで表現することができるので、高・中・低音の全ての楽器と合わせることができるのです。

2点目は、「自分を失わない」ことも大切にしています。「寄せる」という話をしましたが、打楽器には、他の楽器にはない独自の役割があります。それは、場面を変える一音の力を示すこと。演奏を料理に例えるなら、スパイス的な要素をもたらす役目が打楽器にはあるのです。

静かな音楽が奏でられている中でも、一瞬にして場面を変えるために「ダン」と叩かなければいけないので、「えいっ」という度胸が必要ですね。楽団の編成の中で、打楽器のパートは一つの楽器に奏者一人ということがほとんどですから、それぞれがソロとして緊張感と責任感を持って臨んでいます。

このほか、打楽器にはリズムを刻む役目もあります。全体の演奏が崩れないように基調となるわけで、正確なテンポを刻んでいかなければなりません。

ただ、これが案外複雑なのです。演奏者が30人、40人と編成が大きくなればなるほど音の層が厚くなって、演奏者同士の距離が広がる分、音響に時差が生じます。そうしたことを考慮して役割を果たさなくてはならないのです。例えば全ての楽器の音がスピーカーから出てくるような電子機器を使っての演奏ならば、それぞれの楽器の音に時差は生じませんが、楽器の「生の音」を扱う私たちは、それぞれの演奏者の耳に音が届くまでに時差が生じるのです。奏者同士の距離に加え、クラリネットのベルは床を向いていたり、トランペットのベルは観客席側を向いていたりと、音の出る方向が違うことも原因です。自分は正確なテンポを刻んでいると思っていても、どんどん周りと乖離しているということにもなりかねません。

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