TKWO――音楽とともにある人生♪ テナートロンボーン・今村岳志さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。時に彼らの演奏指導にも取り組んでいる。本企画の第7回はテナートロンボーン奏者の今村岳志さん。トロンボーンとの出合いや、奏法について聞いた。

じゃんけんで……決まった楽器 残りものに福あった!

――楽器に初めて触れたのは

幼い頃から水泳スクールに通っていたのですが、進学した中学校には水泳部がありませんでした。どの部活に入ろうかと考えている時、幼稚園の頃から仲良くしてくれていた先輩から、「吹奏楽部に来なよ」と声を掛けられたんです。それで、4月下旬だったと思いますが、幼なじみと2人で体験入部しました。その時にはもう、新入部員への楽器の割り振りが済んでいて、まだ空いていた楽器はテューバ(チューバ)とトロンボーンだけでした。幼なじみとじゃんけんで楽器を決めることになり、私は負けてテューバになったのですが、彼いわく、私がどうしてもトロンボーンをやりたい表情をしていたようで、「岳ちゃん、トロンボーンをそんなにやりたいなら、譲るよ」と換わってくれたんです。

実は小学生の時、吹奏楽の団体に所属していた姉が、練習するためにトロンボーンを家に持って帰ってきたことがありました。その時に、〈これ何だろう? 楽しそうだなー〉ととても興味を引かれたのを覚えています。そういう記憶も影響したのか、友達からは私がトロンボーンをやりたそうな表情に見えたのでしょうね。

――スイマーから奏者へ、華麗な転身を遂げたのですね

そうなんです。でも実際には、言葉のイメージほど“華麗”ではなかったですけどね(笑)。トロンボーンは、トランペットやテューバといった他の金管楽器と音を鳴らす仕組みは同じで、マウスピースに唇を当て、バジングという息を吐いて唇を振動させる動きで音を出します。さらに、スライド管を伸ばすと音が低くなり、縮めると高い音になる楽器です。ただ、このバジングがそれまでの生活でまったくやったことのない動作だったので、音を出すのに1週間ぐらいかかりました。最初は同じ音しか出せませんでしたが、徐々に音程の高低をつけられるようになり、メロディーが少しずつ吹けるようになると楽しさが増して、どんどんのめり込んでいきました。

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