本会の「一食福島復興・被災者支援」事業 拠出先として9団体に計730万円を寄託

11月11日、「市民科学研究室」は東京・世田谷区内で、大学生らを対象に、放射能への理解を高めるワークショップを開催した

東日本大震災の継続的な被災地支援のため、立正佼成会一食(いちじき)平和基金運営委員会はこのほど、「一食福島復興・被災者支援」事業の今年次の拠出先を発表。NPO法人や住民組織など9団体に計730万円を寄託した。拠出先の選定を含む事業の運用は、昨年に続き、NPO法人「ふくしま地球市民発伝所(福伝)」(竹内俊之代表理事)に委託された。

同県では、震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から6年が経過した今年4月、12市町村に及んだ避難指示区域が7市町村にまで縮小された。しかし、被災者の帰還は国や自治体の想定通りには進まず、現在も5万4579人が県内外で避難生活を送る。

福伝はこうした中、被災地や避難者の状況を調査。その結果、放射能への誤解などから生じる作物の風評被害や避難者に対する差別意識の蔓延(まんえん)、高齢者の孤立などの課題が今なお山積していることが分かった。

これを受け、拠出先として、風評被害解消のため首都圏などからの来訪者による農作業体験の実施や、地元野菜の配布により仮設や復興公営住宅の住民同士をつなぐ活動などに取り組む9団体を選んだ。

このうち、NPO法人「市民科学研究室」では、放射能や避難者が置かれている状況への理解不足からくる、県内外の避難者と避難先住民との摩擦を解消するため、年に数回、小・中・高校生や大学生などを対象に、県内の学校や東京都の公共施設で「放射能リテラシーワークショップ」を開催。他団体と共同制作したワークショップのハンドブック『みらいへのとびら』を使い、同団体の上田昌文代表が進行役となって放射能に関する知識の習得や避難者の現状を理解する授業を行ってきた。

上田氏は、「福島原発の事故による避難者とその子供の人権を守り、再稼動に向かう他の原子力発電所の動向を注視していくことが重要です。放射能の科学的知識を元に事故が生み出した社会状況をとらえた上で、自分がすべきことを考えられるようになる授業を全国で実施していきたい」と話す。

「ふくしま30年プロジェクト」によるワークショップが11月23日、福島市内で行われた。参加者20人は、キムチの作り方や発酵食品の効果を学んだ

また、認定NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」は、放射能の影響に不安を抱く住民の精神的な負担軽減や、放射能に対する知識を深めながら健康維持を図ることを目的に設立。市民の立場で環境や食品に含まれる放射線量、内部被ばくを測定するほか、子育て世代を対象とした医師による研修会の開催、免疫力向上が放射能の影響を受けにくくするとして注目を集める発酵食品作りに関するワークショップなどを実施してきた。

同団体の佐原真紀理事は、「放射能の影響に不安を感じる母親たちが、気兼ねなく情報交換を行える場を提供し、甘酒やキムチなどを作りながら、被ばくから身を守るための方法を学んでいます。これからも、不安を抱える市民の心に寄り添い、ニーズに応えていける活動を展開したいと思います」と語っている。

 

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