【特別インタビュー 第41回庭野平和賞受賞者 モハメド・アブニマー博士】諸宗教の教えを生かし和解・共生の道へ 戦争を止めるために、共に祈りと行動を

分断社会を乗り越える

庭野 現在の国際情勢をどのように見られていますか? 特にイスラエルとパレスチナの状況についてお話しください。

アブニマー ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの武力衝突が起こり、国際社会は二極化しています。この分断状況を見るにつけ、軍事力の増大や武装化では解決できないという基本的な教訓を、私たちは今なお、学び切れていないと痛感します。

特にガザでは大量虐殺が起こり、多くの人命が失われています。即刻、紛争を停止しなければなりません。人質も即解放すべきです。

イスラエル政府は長年、パレスチナ人の存在を認めず、アパルトヘイト(人種隔離)政策をとってきました。こうした迫害もやめさせなければなりません。停戦なくして、対話は行えないのです。

アメリカをはじめ各国の学生や若者らが、この悲劇を終わらせるために抗議の声を上げています。私たちもイスラエル、パレスチナの双方の組織に停戦を強く求め続けなければなりません。大国には武力行使に加担しないよう訴えていかなければなりません。今、それぞれができる支援を――。例えば停戦のために身近な政治家に働きかけるとか、食料や医薬品支援に協力するといったことがあります。ロールモデルとなる宗教者には、とりわけ行動が求められます。

平和の祈りを捧げながら、それぞれの場で行動していきましょう。傍観者でいることは大量虐殺を認めていると思われかねないのですから。

庭野 最後に佼成会の会員にメッセージをお願いします。

アブニマー 庭野平和賞を受賞し、平和の実現に尽力されたこれまでの受賞者の列に加えて頂けたことを、とても光栄に思います。また、立正佼成会を訪問し、多様性や共生を大切にされている皆さまの心に触れ、私が願っていることと共通するものを感じました。勇気を頂戴(ちょうだい)しましたことに感謝申し上げます。

私は五つの原則を掲げて、平和活動に取り組んできました。

それは、「人間の多様性の美しさを認識し、祝福する」「平和構築と紛争解決のプロセスに心を導入する」「疎外されている人々、声なき人々のために、いかなる場所であろうと立ち上がる」「最も暗い闇に閉ざされている瞬間に、平和を想像する技術を高める」「活動の中に、霊性と信仰が毒から心を解放する魔法の空間を設ける」の五つです。

今回の受賞を励みとし、今後も、この原則に沿ってさらに取り組みを進めていきます。共に連帯し、平和を築いていきましょう。

プロフィル

モハメド・アブニマー 1962年、イスラエル北部ガリラヤのパレスチナ人家庭に生まれる。ムスリム。ヘブライ大学在学中、アラブ人とユダヤ人の対話による平和構築に携わった。89年に渡米し、ジョージ・メイソン大学で紛争解決学の博士号を取得。英国の北アイルランド、スリランカ、フィリピン、アフリカやアラブ諸国で宗教間対話による問題解決に尽力した。2003年には「平和と正義のためのサラーム研究所」を創立。近年は、対話、和解を促進するためのトレーニングやワークショップなどを通じて人材育成にも力も注ぐ。