【特別インタビュー 第38回庭野平和賞受賞者 昭慧法師】多様性を尊び、分かち合う世界を目指して

修行の本質を見失わずに

庭野 昨年から世界では、新型コロナウイルス感染症の流行が続いています。パンデミック(世界的流行)は、まさに世界がつながっていることを明らかにしました。今、私たちはどんな生き方が求められていますか。

昭慧 ウイルスの変異株が次々と現れていますが、ワクチンを含めた、感染症への対策に関しては、科学的見地に基づいた医療や防疫の専門家の英知に期待したいと思います。

一方、社会では感染拡大が深刻になった時、いろいろな所でさまざまな非難の声が上がり、社会全体のいら立ちを感じました。鬱屈(うっくつ)した思いを抱えた時、人を非難すれば苦しみが軽減されたように感じることがあるかもしれませんが、それは解決とは言えませんから、さらなる混乱を招かないためにも、仏弟子である私たちは、教えに沿って行動することが重要です。この世は無常であるとの認識を深め、変化を受けとめながら、穏やかな心で過ごし、他人を責めずに温かな人間関係を保つことが求められていると思います。

©佛教弘誓學院

また、ロックダウン(都市封鎖)やそれに準ずる政策は、大勢の失業を招きました。これは戦争状態にほぼ等しいと言えます。政府による救済は必要ですが、それだけにとどまらず、市民一人ひとりが困窮者に手を差し伸べ、助け合っていくことが大切です。特に感染者や医療従事者への差別はなくしていかなければなりません。苦しんでいる人を思いやり、懸命に働いてくれている人を応援する――そうした平和の気持ちを持ち続けたいものです。

コロナ禍という未曽有の事態に直面しても、仏弟子である私たちは修行の本質を見失ってはならないのです。

立正佼成会の創立の原点は、仏教によって「人を救う」ことですから、佼成会の皆さまは同志だと思っています。慈愛に満ちた世界になるよう手を携え、共に努力を重ねていければと願っています。

庭野 どうもありがとうございました。

プロフィル

チャオフェイ 1957年、ミャンマーに生まれ、65年に家族で台湾に移住。国立台湾師範大学在学中、21歳で仏門に入り、2年後に具足戒を受け僧侶となった。86年に人間仏教を広める「佛教弘誓學院」を創立した。80年代後半以降、さまざまな社会運動を主導してきた。現在、玄奘大学宗教文化学部教授で、学部長も務める。