WCRP/RfP日本委「日米韓青年交流プログラム」 平和へ、相互理解深める

広島平和記念公園を訪れた参加者は、HRCPのメンバーから原爆が投下された当時の状況などについて説明を受けた

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会による「日米韓青年交流プログラム」が6月22日から25日まで、大阪市、兵庫・姫路市、広島市の施設で開催された。米・コーネル大学の学生をはじめ、韓国宗教人平和会議(KCRP)と同日本委青年部会のメンバー、さらに芳澍女学院情報国際専門学校の学生を加えた計36人が参加した。

同プログラムは、コーネル大学と臨済宗妙心寺派佛母寺(千葉・富津市)が合同で12日から25日まで行う「実践授業講座」に同日本委が協力し、日韓の青年が一時的に参加して交流を図るもの。3カ国の青年たちが禅修行を通じて自らの心に向き合うとともに、相互理解を深め、民族や国家を超えた平和のあり方を探求することを目的とする。昨年6月に続き2回目の実施となった。

参加者は期間中、姫路市の臨済宗妙心寺派龍門寺に宿泊して坐禅に取り組んだほか、掃除を行う「作務」や般若心経の「読経」、「粥座(しゅくざ)」などの修行を体験した。

24日には、NPO法人「ヒロシマ宗教協力平和センター」(HRCP)の受け入れのもと、広島平和記念公園を訪問。平和記念資料館や原爆ドームを見学し、慰霊碑、供養塔を訪れ、戦没者に慰霊の誠を捧げた。

被爆体験に耳を傾け

この後、同資料館内で、在日韓国人二世のイ・ジョングン氏とHRCPの玉川祐光氏の「被爆体験証言」に耳を傾けた。

イ氏は冒頭、原爆が投下された1945年8月6日の行動を詳述。原爆投下の10分前に電車で爆心地を通過して下車した後、職場に向かっている時に被爆し、首や手足などに大やけどを負い、傷口にウジ虫がわいたと説明した。朝鮮半島出身者に対する差別を案ずる母親からは、やけどを負った息子への哀れみから死を促され、職場では退職を余儀なくされるなど、今日までの苦労を述懐。「戦争が二度と起きないよう、原爆の悲惨さや恐ろしさを、身近な人に伝え、継承してほしい」と訴えた。

また、玉川氏は被爆体験を語った上で、戦後、鹿児島・沖永良部島で仕事中に米軍のタンクローリーと衝突し、骨折したエピソードを紹介。原爆が投下されて以降、アメリカ人に恐怖心を抱いていたが、この時、米軍が沖縄本島の病院までヘリコプターで緊急搬送し、手術や輸血を施してくれたことで見方、考え方が変わったと話し「戦争がいかに、人々の中にある“善の心”を失わせるかを身をもって体験しました。どんなことがあっても戦争だけは起こしてはいけません」と語り掛けた。

同プログラムを終えて

コーネル大学 マイケル・マウアーさん(21)
「禅を体験するにあたり、最初は何も考えないようにするのは簡単だと思っていました。しかし、実際に坐禅に取り組んでみると、周りは静かなのに私の頭の中に次々と雑念が浮かび、心を無にすることがとても難しく感じました。静かに自分と向き合う大切さを知り、今後も実践していければと思います。また、アメリカでは原爆について死傷者数などの数値しか学びません。今回、広島を訪れて、資料館の見学や被爆者の体験を通し、悲劇的なことが起こっていたのだと改めて知りました。アメリカに帰国したら、多くの人に学んだことを伝えます」

KCRP キム・ヨンファンさん(25)
「私は仏教徒です。今回、皆さんといろいろな考えを共有しながら、日本の仏教について学ぶことができたのは、とても貴重な経験になりました。また、広島を訪れて原爆について学んだことも、強く印象に残っています。韓国では小学校の授業で、第二次世界大戦のことを勉強します。その際、原爆投下は『戦争を終わらせるため』だと教わります。しかし、実際に平和記念館を見学する中で、原爆により多くの命が奪われた現実と悲惨さを実感しました。韓国人の犠牲者がいたことも初めて知りました。これからも交流を通してお互いの立場を知り、日韓関係をよくしていきたいと思います」

WCRP/RfP日本委青年部会 日置春彦さん(34)=神社本庁=
「今回のプログラムは他の宗教を知るとてもいい機会でした。禅に取り組む中で、禅も答えは自分の内で探すものと感じ、神道との共通点を発見しました。また、仏教には『無常』という考え方がありますが、神道にも今を大切に生きるという無常と似た『中今』という思想があります。仏教と神道に共通する考え方があると知ることができたのが、学びの一つです。さらに広島で、コーネル大学のジェーン・マリー・ロー教授が、答えが簡単に出ない質問を自分の中に見つける大切さを語っていました。自分に語り掛け、答えを見つけていきます」