「2033年にエルサレムで人類の救済を祝おう/教皇」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

2033年にエルサレムで人類の救済を祝おう/教皇
トルコを訪問中であったローマ教皇レオ14世は11月29日、イスタンブールを代表するイスラームの礼拝所である「スルタンアフメト・モスク」(通称・ブルーモスク)に足を運んだ。15分間の短い訪問だったが、教皇を案内した同モスクのムアッジン(信徒に祈祷の時刻を告げる人)を務めるアシュキン・ムーザ・トゥンカ師は、「教皇がもう少し時間をかけて見学し、モスクの雰囲気を感得したかったと発言していたが、満足そうだった」と、訪問後に述べていた。
ブルーモスクの訪問を終えた教皇は、イスタンブールにあるシリア系正教の「モル・エフレム教会」で開催された「キリスト教指導者・共同体代表者会議」に臨んだ。円卓を囲んでの非公開の会議だったが、教皇はその中で、2033年に聖都エルサレムにおいて「人類救済の2000年祭」を共に祝おうと、世界の全キリスト教会に呼びかけたとのことだ。人類救済のために十字架上で亡くなり、3日後に復活したキリストの業(わざ)を、エルサレムにある「最後の晩餐(ばんさん)の間」で共に祝おうとの提案だ。
最後の晩餐においてキリストは、自ら使徒たちの足を洗うことによって、奉仕することの重要さを教え、「あなたたちが一つであるように」と祈り、彼らに一致の重要性を訴えた。「最後の晩餐の間」はまた、キリスト教の一致のシンボルである「聖霊」が使徒たちに降臨した場所とされている。
キリスト教指導者たちとの会議を終えた教皇は、正教の総主教府を訪れ、バルトロメオ一世総主教と一緒に「合同声明文」に署名した。同声明文は「第1回ニケア公会議」に言及しながら、キリスト教一致の出発点としての「真の(父なる)神から生まれた真の神(の子)であるキリストが、人となり(受肉)、十字架上で死し、3日後に復活した」という、「三位一体の神」への信仰を「告白」している。両指導者は合同声明文の中で、ニケアの公会議が、キリスト教徒にとって最も重要な祝日である「復活祭」の日を定めるための範疇(はんちゅう)をも制定したことを追憶。現在、東の正教会と西のキリスト教諸教会が別々に祝っている復活祭を、共に同じ日に祝うことができるようにとの希望を表明している。
1965年に教皇パウロ6世とアテナゴラス一世によって解消された、東の正教会と西のカトリック教会間における「相互破門」(大シスマ)にも言及する合同声明文は、今後とも東西両教会間での一致に向けた努力を、「カトリック教会と正教会間における神学対話に関する国際合同委員会」を通して継続していくと約束している。
一方、キリスト教一致に向けた努力は、「全ての民の間における平和に対し、根本的で活性的な貢献をしていくことをも含まなければならない」とも明記された。「地上における平和に対する神の恵みを、熱く願う声を上げていく」ことが重要なのだ。それは、「悲しいかな、世界の多くの地域では、暴力が多くの人々の命を奪い続けている」からである。合同声明文はここで、市民社会と政治指導者たちに対して、「戦争という悲劇が即刻に停止されるために、可能な限りの努力を保障するように」と要請し、このキリスト教からの嘆願が「全ての善意の人々によって支援されるように」と願った。
「宗教や神の名によって暴力を正当化する、あらゆる試み」を拒否する合同声明文は、「諸教の混交や混乱を避ける純なる対話は、違う伝統や文化に属する諸国民間での共存のために、本質的な役割を果たす」と主張する。そして、第2バチカン公会議の諸宗教対話に関する宣言文「ノストラ・エターテ」の公布60周年の機会に、「全ての善意の男女が、より正義に適(かな)い、連帯を基盤とする世界の構築と創造(自然)に対するケアをしていくように」と呼びかけている。それは、「人類家族が、無関心、支配への欲望、利益追求の貪欲、人種差別を克服していく道が、ここにあるから」だ。
現行の国際状況に対する警鐘を鳴らす合同声明文だが、「私たちは、希望を失わない」と表明する。なぜなら、「私たちを救うために、唯一の子であるキリストを地上に遣わされた神が、人類を見捨てられることはない」からだ。
イスタンブールを後にした教皇レオ14世は、レバノンへ向かう機上で2人のトルコ人の随行記者からの質問に答え、「中東紛争に関する唯一の解決策である2国家原則」、「ウクライナ戦争解決のための対話、停戦、トルコの役割」についての見解を述べた。
「宗教、民族、その他の違いを超えて、人間は平和の裡(り)に共存できる」と強調する教皇は、「トルコとバチカンが、2国家原則を支持しているが、イスラエルはいまだにこの原則を受け入れていない」と分析し、「イスラエルとの友好関係をも保持するバチカンは、双方にとっての正義に適った解決策を模索し、調停者としての声を上げていく」と主張した。
ウクライナ戦争解決に向けたトルコの過去の調停努力を評価する教皇は、現在、「新しく具体的な和平案(トランプ大統領案)」が提出されていることに触れ、ウクライナ、ロシア、米国の大統領との関係を保持するエルドアン大統領の折衝と停戦に向けた努力に期待した。
最後に教皇は、バチカン報道官のマテオ・ブルーニ氏から示唆され、「2033年に聖都エルサレムで執り行いたい人類救済2000周年記念式典」の提案について発言。「(他のキリスト教指導者たちから)提案は受け入れられたが、招待状はまだ発行していない。2033年にエルサレムで執り行われるキリストの復活に関する一大イベントの企画だが、まだまだ時間はある」とのことだ。





