「世界に諸宗教対話を広めた“アッシジの精神”/聖エジディオ共同体」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

記念式典後、教皇に特別謁見する庭野理事長(カーシャ・アルテミアク撮影)

ローマ教皇パウロ6世と庭野開祖の出会いを可能としたバチカン宣言文

立正佼成会の庭野日敬開祖 が第2バチカン公会議に招待され、ローマ教皇パウロ6世と出会い、同教皇から「キリスト教徒が仏教徒のために祈り、仏教徒がキリスト教徒のために祈る」時の到来を告げられたのは、1965年の9月だった。「カトリック教会の外に人の救いは無い」といった独善的な立場を改め、世界の諸宗教と対話を推進していく決断を下した「第2バチカン公会議」が閉会へと向かっていた時だ。

教皇パウロ6世による庭野開祖への言葉を可能とした、第2バチカン公会議の「ユダヤ教と世界諸宗教との対話に関する宣言文」(「ノストラ・エターテ」=ラテン語で「われわれの時代」)が公布されたのは、教皇パウロ6世と庭野開祖の出会いから1カ月後の1965年10月28日だった。第2バチカン公会議で公布された多くの公文書の中では、3ページほどの短い宣言文だが、世界の宗教史に与えたインパクトは大きかった。「われわれの時代においては、人類が日毎に、より緊密に一致し、諸国民間における相互依存が強まってきている」との言葉で始まる。そうした状況下でカトリック教会は、「キリスト教以外の諸宗教との関係を、より強い関心を持って検討する」というのだ。「人々の間、特に、諸国民間における一致と、彼らに対する愛徳を促進していく過程において、カトリック教会は、第一に、分かち合われた宿命を共に生きるように人々を促す、(人類に)共通した全ての要素を検討していく」と主張する。さらに、終わりの部分で「普遍的友愛」に言及し、「もしわれわれが、神の似姿として創造された全ての人々の間で、何人かの人々を兄弟として認めず、拒否するなら、神を父と呼ぶことはできない」と記している。なぜなら、「人間の父なる神に対する態度と、人間の兄弟である他者に対する態度とは、本質的に結び付いており、聖書が“愛さない者は神を知らない”と教えている」からだ。

聖エジディオ共同体の主催する「第39回世界宗教者平和のための祈りの集い」がローマ市で閉会した10月28日、バチカン市国内の「教皇パウロ6世一般謁見ホール」で夕刻(現地時間)、バチカン諸宗教対話省のイニシアチブで「ノストラ・エターテ」公布60周年を祝う式典が執り行われた。式典では、教皇パウロ6世が直接に署名した「ノストラ・エターテ」の原文が展示された。今年の聖年のテーマでもある『希望を持って歩もう』をモットーとする同式典には、世界の宗教指導者や信徒たち約3000人が参加し、教皇レオ14世がスピーチした。本会からは、庭野浩士(選名・統弘)・庭野平和財団理事長が参加し、記念式典の後に、教皇に特別謁見した。

世界各国から参集したグループによる「文化イベント」と世界の宗教指導者たちによる「諸宗教対話の証(あかし)」で彩られた記念式典でスピーチした教皇は、「今日のあなたたちの出席は、(「ノストラ・エターテ」の)種子が育ち、巨木となったことを示している」と指摘し、「その巨木が枝葉を広く伸ばし、避難所を提供しているのみならず、相互理解、友愛、協調、平和に関する豊かな実を結んだことを証している」と強調した。5月の新教皇就任式典に参加した世界諸宗教指導者たちに感謝を表明した教皇は、「おのおのの宗教伝統が提供する叡智《えいち》に導かれる宗教指導者として、私たちは共通する聖なる責任を有する」と呼びかけ、協調することによって、「人々を偏見、怒り、憎悪から解放し、利己主義、自画自賛を乗り越えさせ、人間の魂と地球を破壊する欲望を克服させていくように支援できる」と鼓舞した。「私たちの民(信徒)が現代の預言者、即ち、暴力と不正義を告発し、分断を癒やし、われわれの全ての兄弟姉妹のために平和を告げる声となっていける」のだ。最後に、教皇は「この歴史の重要な転換期にあって、全ての男女の人間性と聖なる感覚を呼び覚ますという、大きな課題が与えられている」と述べ、スピーチを結んだ。

教皇レオ14世は、翌日(29日)のバチカン広場での一般謁見でも「ノストラ・エターテ」をテーマに法話を行い、世界から参集した信徒たちに「諸宗教対話の重要性」を説いた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)