一食平和基金 JENによる事業報告会を開催

立正佼成会の事務所で報告会は行われた
紛争や自然災害が多発し、人道支援のニーズが世界的に高まる中、立正佼成会一食(いちじき)平和基金は昨年(2024年)、「緊急救援・復興支援」の分野において、認定NPO法人ジェン(JEN)と合同で行う「人道救援・復興支援事業」に2000万円を拠出した。これを受け、7月24日、JENの木山啓子事務局長、同グローバル事業部の松浦晃子マネジャーらが本会を訪れ、事業報告会が開かれた。本会から熊野隆規理事長、齊藤佳佑教務部長、JENの副代表理事を務める齋藤高市大田教会長らが出席した。
報告会では、アフガニスタン、パキスタン、トルコの3カ国で行われている事業が説明された。
2021年8月以降、復権したタリバンによる統治が続くアフガニスタンでは、経済の低迷などから人口の半数となる約2300万人が支援を必要としている。JENは、経済悪化に加えて干ばつ被害に苦しむ同国東部のナンガルハール県を中心に、帰還民や国内避難民、地域住民の命と暮らしを支える活動を継続している。
松浦氏は、現地の写真を見せながら、水や食料の提供に加え、「フード・フォー・ワーク」による灌漑(かんがい)整備、生計を回復させる自立支援など八つの事業を説明した。中でも、「ブレッドプラス(Bread+)」プロジェクトについて、地域のパン屋と提携して栄養価の高いパンを3万人以上の子どもたちに、毎日届けていると力説。それにより、就学率や出席率、子どもの栄養状態の改善に貢献するとともに、地域住民の衛生意識の向上、女性たちの雇用の創出にもつながっているという。同事業の実績が国連世界食糧計画(国連WFP)に評価され、他団体との連携が始まるなど活動の幅が広がっていると報告した。
一方、隣国パキスタンでは、経済や治安の悪化に加えて2022年の大洪水の影響もあり、多くの家庭が困窮している。JENは特に被害の大きかったシンド州ダドゥ郡で、洪水被災農家への農業支援や、自然災害に対する教育、水衛生改善プログラムを実施している。
松浦氏は農業支援の詳細を解説した。被災した農家から農業経験のあるリーダー農家を選出し、小麦やからし菜の種子(品質や収穫量が認証されたもの)、肥料などの農業資材を支給。リーダー農家は技術研修を受けながら作物を育て、収穫後は自身が受け取った種子と同量以上の種子を、新たな農家に共有(シードシェア)するという。2年目を迎えた現在、生産量が増加するとともに、多くの農家が農業再建に成功していると話した。
また、トルコでは2023年2月に大地震が発生。松浦氏は、被害の大きかった同国南部のハタイ県で取り組む炊き出しの様子などを報告した。
木山啓子事務局長コメント
設立から30年、立正佼成会さんと事業を行ってきて、一人ひとりの人間を大切にするという思いがベースにあることを教えて頂きました。支援先の皆さんは、紛争や災害で大切な家族や仕事、家を失って大変傷ついています。そんな状態で「自立」と言われても、そう簡単ではありません。けれども、彼らが生活を取り戻していくには自立しかないのです。なので私たちは、傷ついた人々が自分で自分の人生を歩み直す、尊厳を取り戻すためのサポートをさせて頂くことが、大事な役割だと思っています。
世界的にも人道支援のニーズはどんどん高まっています。飢餓に苦しむ人の数は、世界第3位のアメリカの人口の倍。全てのニーズに応えることは難しいといえます。だからこそ、一回きりの食料配布で終わる支援ではなく、受益者の方々が自ら選んで行動し、尊厳を取り戻して人生を立て直していけるような支援が重要です。シードシェアのように、一つの事業の投入でつながりや可能性が広がっていく、そんな波及効果のあるプロジェクトを今後も心がけていきたいと思います。
今も、世界では悲しい出来事がたくさん起きています。何人殺された、犠牲者は何万人を超えたと、連日ニュースで報道されていますが、実際には、亡くなった一人ひとりに人生があって、その背景にたくさんの大事な人たちがいて、その大事な人たちがその方の死を悲しんでいます。そんなたくさんの人の人生や思いが絡み合った中で、私たちは支援をさせて頂いています。これからも、佼成会の皆さまから学んだ「一人ひとりは等しく尊い」というメッセージをかみしめながら、目の前の一人ひとりを大切に自立に向けた支援に取り組んでまいります。