WCRP/RfP「第3回東京平和円卓会議」 戦争を超え 赦しと和解を目指す(動画あり)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会と同日本委員会、国連文明の同盟(UNAOC)の共催による「『戦争を超え、和解へ』諸宗教平和円卓会議」の第3回東京平和円卓会議が7月1日から3日まで、東京都港区の東京プリンスホテルで開催された。世界15の国と地域から約120人が参加した(オンラインを含む)。同会議では、紛争地域の宗教指導者たちが集って対話し、紛争の即時停戦を訴えるとともに、和解や平和構築に向けた具体的な行動を模索した。立正佼成会から、WCRP/RfP国際共同議長を務める庭野光祥次代会長、同日本委評議員の熊野隆規理事長らが出席した。

暴力の連鎖断ち、国民同士のつながり回復を

「多くの暴力がはびこっています。誰もが疲弊しています」。東京平和円卓会議の席上、WCRP/RfPミャンマー委員会のイン・イン・モー事務総長らが、険しい面持ちでミャンマーの現状を伝えた。蔓延(まんえん)する女性や子どもへの暴力、紛争の前線に立つ若者が同胞を殺害したことで抱えるトラウマ(心的外傷)――現地の人々が直面する深刻な問題の一つ一つに、世界各国の諸宗教指導者は静かに耳を傾けた。

2021年2月のクーデター以降、ミャンマーでは軍事政権による市民への弾圧がやまず、空爆や地上戦で現在も多数の民間人が命を奪われている。その上、今年3月28日にはマグニチュード7・7の大地震が発生。住民たちは飢餓や貧困に苦しみながら復興に励んでいる。

情勢が厳しさを増す中で開かれた今回の円卓会議で、ミャンマー委の宗教者たちが訴えたのは、紛争が激化する今こそ「赦(ゆる)し」と「和解」を目指す取り組みが一層重要になるというメッセージだ。

当日の様子(クリックして動画再生)

喫緊の課題は、暴力の連鎖を断ち、国民同士のつながりを回復すること。ミャンマー委でプロジェクトコーディネーターを担う女性宗教者は、諸宗教指導者がトラウマ治療に取り組んでいると発表した。彼らは、暴力で心身に傷を負った住民に対し、アートを用いて物語を語り聞かせて苦しみを癒やし、相互理解や共存の大切さを伝えている。「地域社会の人々の身体的、精神的なレジリエンス(回復力)の育成が必要です」と、女性宗教者は会議の中で活動の重要性を懸命に訴えた。

しかし、平和構築への道は依然険しいままだ。多民族国家のミャンマーでは、少数民族への差別や迫害といった分断の歴史があり、社会全体の連帯は容易でない。

迎えた最終日、ミャンマーの社会再建を検討する分科会が非公開で行われ、参加者は紛争下の経験と率直な思いを共有。1時間半の協議の後、ミャンマー委の女性リーダーが代表し、話し合いの内容を全体に発表した。

この中で女性リーダーは、「民主主義を獲得するための抵抗が“人対人の戦い”と化した」という参加者の声を紹介し、軍事政権と対話して暴力を赦すことの難しさを痛感したと語った。それでも、宗教者たちは苦難にある市民のため、「(軍事政権と同じ)テーブルに着かなければ平和への変容は起こせない」との見解で一致したと、前向きな口調で明かした。

また、将軍宛てに書簡を送付するといった停戦を求める試みが紹介されたほか、対話の実現に向けた仲介を国際社会に訴えるなど、今後の具体的な方針についても話し合われた。

閉会式では、同国ヤンゴン大司教でWCRP/RfP国際共同会長のチャールズ・ボー枢機卿が、「宗教指導者には、傷ついた人々の心、避難民の住む家、そしてアイデンティティーと記憶の中にある隠れた亀裂へ踏み込む力がある」と会議を総括した。赦しと和解の実現には、紛争下にある全ての人の心の痛みに寄り添い、受けとめていく宗教者の存在が必要不可欠なのだ。

復興への原動力

紛争解決の道を探る一方、WCRP/RfPミャンマー委員会では、大地震の被害を受けた住民への食料配布や避難所の開設など、間断なく人道支援を続けている。内戦と自然災害の二重苦に見舞われ、支援にあたる宗教者に疲弊が広がっていても不思議ではない。だが、イン・イン・モー事務総長は、各国の宗教者を前に力強く語った。

「私は確かに苦しみにあえいでいますが、その中にも光は必ずあります。ですから、常に目を前に向けて、どのようにして(他宗教の指導者と)協力できるかを考えています」

ミャンマー委はキリスト教、イスラーム、仏教など、宗教を超えて信仰者が協働し、支援活動を展開している。諸宗教指導者が互いに手をとり合うことに、事務総長がどれほど希望を感じているかが垣間見えた一幕だった。

WCRP/RfPミャンマー委の支援活動には、同日本委による「ミャンマー地震緊急支援募金」の浄財が活用されている。「地震発生直後、日本委員会が『緊急に必要なものはないか』と連絡をくださり、頂いた約3万ドルで200軒の家に支援物資を届けられました。日本委員会の中核を担う立正佼成会の皆さまに、心から感謝いたします」と、同事務総長は笑顔を見せた。

本会会員の真心もまた、遠くミャンマーで、明日の平和を築く人々の揺るぎない希望になっている。円卓会議を通じて、信仰を持つ一人ひとりが祈り、思い続けることの力が可視化されたように感じた。

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