荒川教会「降誕会」から 元小学校校長が講話 いのちを輝かせよう

「若い人たちに、いのちを輝かせてほしい」――瀧川浩代教会長の願いのもと、4月6日、立正佼成会荒川教会は「降誕会(花まつり)」を開催した。読経供養では少年部員、学生部員が誓願して式衆をつとめ、説法には学生部長(24)が立った。式典で、『人は誰もが尊い』をテーマに、荒川教会会員で元小学校校長(68)が行った講話の一部を紹介する。
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現役時代は教諭として、退職後はソーシャルワーカーとして、多くの小中学生と触れ合う中で感じるのは、一人ひとりが奇跡的な確率で生まれてきた尊い存在なのに、自己肯定感が低く、失敗の恐怖から行動できない子どもが多いということです。
不登校の中学生・Nちゃんは、SNS上のトラブルを機に小学校中学年の頃から、家以外で言葉を発しなくなりました。Nちゃんが地域の教育相談室に来るたびに、私は「よく来たね」と声をかけ続けました。ゲームをしたり、勉強したりするようになったある日、中学生向けの問題を一緒に解いていて、私が「ダメだわ、間違ってばかり」と言うと、Nちゃんが笑いました。その話をNちゃんから聞いたお母さんは、「この子は人と関わるなんてできないと思っていましたが、先生の所に行ったら笑うようになりました」と本当にうれしそうでした。
ある時、相談室のみんなに、全身の筋肉が衰えていく難病の筋ジストロフィーを患う少年の話をしました。少年は、人に迷惑をかけるだけの自分は何のために生きているのか分からなくなり、目も開けない、物も言わないと決めた。母親がスープを彼の口元に持っていっても、口を開かない。母は涙を流した。その涙が彼の頰に落ちたことに驚き、彼が目を開けると、母は大喜びした。その姿を見た彼は、こんな姿でも親は喜んでくれるのかと思い、胸がいっぱいになり、詩を書きました。一部を紹介します。
「僕のいのちは、こんなに短いんだ/だからぐずぐずしてはいられない/僕はどんなに小さな喜びでも、喜びを感じたら/周りの人に分けてあげよう」
この詩を聞いたNちゃんがぼろぼろ泣いたのです。私は一緒に泣きながら、あなたの“感じる心”が素晴らしいよ、少しずつ進んでいこうねと話しました。
人は誰もが、人と比べてではなく、無条件に素晴らしい心を持っています。その子のペースを尊重して、得意なところを伸ばす関わりをさせて頂きましょう。