一食運営委 能登半島でのシャンティ国際ボランティア会(SVA)の支援事業を視察

一食平和基金運営委員会の一行は3月17日、昨年の震災と豪雨災害に見舞われた能登半島を訪れ、現地で支援活動を展開するSVAの移動図書館事業を視察。同団体の中井氏(写真右)から事業について説明を受けた(写真は全て同基金提供)
3月17日、本会一食平和基金運営委員会の齊藤佳佑委員長と同委事務局スタッフの一行が、昨年元日の能登半島地震と同9月の豪雨に見舞われた石川県輪島市の被災地を訪れた。同基金が一食運動の浄財を基に支援する、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)の移動図書館事業を視察するためだ。
被災地では、仮設住宅に入居する被災者の多くが孤独や健康不安を感じているという。石川、富山、新潟の3県によると、生活環境の変化などが原因の災害関連死は計364人(5月13日時点)に上っており、被災者の心のケアや孤立させないコミュニティーの形成が不可欠とされている。

SVAのスタッフは、被災者がリクエストした本をワンボックスカーに積み込み、日々、事業の開催地に本を運ぶ
こうした中、SVAは地震発生当初からの輪島市内での緊急支援活動に加えて、昨年7月からは同市立図書館と連携し、被災者がリクエストした本をワンボックスカーに積載して仮設の集会所や公民館を巡回。本の貸し出しを通して被災者の前向きに生きる力をサポートするとともに、住民同士の交流の場を提供して孤立化を防ぐ役割も担ってきた。
当日、同基金運営委の一行は輪島市内にある河原田公民館の一角に設けられた移動図書館「ほんねんて! ブックカフェ」を視察。カフェのスタッフとして一行を案内したSVA緊急人道支援担当の中井康博氏が事業について説明した。
中井氏は、「一人でいると気が滅入(めい)るので、人に出会い、本にも出合える移動図書館が有り難いといった利用者の声をよく聞く」と話した。最近は、悩みとの向き合い方よりも、手芸やDIYなど自分の時間を有効活用する本のリクエストが増えており、そうしたニーズの変化にも事業が役立っていると語った。

移動図書館の開催を示すのぼり旗は、被災地域の住民にとって生きる希望となっている
また、今秋にはこれまでの車両を入れ替えて、新たに書架が備え付けられた専用車両を導入することを紹介。これにより、開催会場の設営や本の搬入などにかかる時間を削減して一日あたりの巡回先の数を増やせるため、「地域住民の利便性の向上につながる」と述べ、一食の支援で活動が行えることに謝意を表した。
齊藤委員長は、倒壊したままの家屋や修繕途中の道路など視察中に見た光景に触れながら、復興はまだ道半ばという印象を受けたと強調。これまでの日常を災害で突然奪われた人々にとって、移動図書館事業が、生きる希望や前を向いて立ち上がる活力になる大変重要な取り組みであることを確認した。