社会参加型の宗教活動について考える 「教団付置研究所懇話会」第22回年次大会
精神疾患や自死の増加、非正規雇用の拡大に伴う不安が深刻化する社会に宗教者は何ができるのか――。こうした問題意識を踏まえ、立正佼成会中央学術研究所が加盟する「教団付置研究所懇話会」の第22回年次大会が10月29日、『社会参加型の宗教活動』をテーマに横浜市の孝道山本仏殿大黒堂会館で開かれた。24の研究機関から66人が参加。本会から同学術研究室の宇野哲弘室長、西康友主幹が出席した。
大会では、本年次の受け入れ教団として孝道教団の岡野正純統理が挨拶。この後、国際仏教交流センターのワッツ=ジョナサン主任研究員、宗教情報センターの藤本直宏・真如苑社会交流部課長、浄土真宗本願寺派総合研究所の安部智海・研究員、NCC宗教研究所の森本典子・関西学院大学神学部専任講師が個別発表に立った。
発題の中で、ワッツ氏は21世紀初頭以降に展開した「Social Engaged Buddhism」(社会参加仏教)の変遷について解説。仏教に基づく終末期ケア活動や臨床宗教師・臨床仏教師などによる被災地支援、仏教教団による自殺防止活動などは、日本が「無縁社会」から脱却し、「有縁社会」へと移行する上で不可欠であると述べた。
宗教者の社会活動の一つとして、藤本氏は真如苑救援ボランティア(SeRV=サーブ)による能登半島地震での支援活動を紹介した。発災直後から、SeRV本部が現地の社会福祉協議会に情報収集してニーズをくみ取り、信徒で構成する「常設SeRV」と連携を密にして活動を展開してきたことを説明。その根本精神は「まず自分の目の前にいる人を笑顔にしようと努め、広く世界に真心を渡し、“利他”の祈りを実践に顕(あらわ)すこと」にあると述べた。さらに、各信徒が利他行や奉仕活動で積み重ねた祈りを、ボランティアの現場で発揮する点がSeRVの特徴と示した。
仏教者による自死問題への取り組みについても言及された。安部氏は2010年に浄土真宗本願寺派の僧侶らが立ち上げた認定NPO法人京都自死・自殺相談センター(Sotto)の設立経緯と活動内容を解説、自死の苦悩を抱えた人々にとって「こころの居場所」の必要性を強調した。
同センターによる「おでんの会」(分かち合いの会)などを例示しながら、こころの居場所づくりの理念は仏教精神に通底すると指摘し、宗教者が自治体と連携して自死防止の啓発活動に取り組む重要性を説いた。
このほか、森本氏は日本基督教団京都教区やアーティスト、市民団体、牧師などによる共同プロジェクトとして京都市で始まった「バザールカフェプロジェクト」を紹介。
カフェ運営や庭づくりを通じて就労の機会を得にくい人に働く場を提供するとともに、“多様な人々がつながり合う場”をつくることが同事業の願いと述べ、セクシュアリティー、年齢、国籍、病気などさまざまな現実の中に生きる人々をありのままに受け入れ、社会の中で共に生きる存在であることを理解し合う場の創出が求められていると主張した。