平和への思いを強めるために――第38回世界宗教者平和のための祈りの集い(海外通信・バチカン支局)
『平和を想像する』をテーマに、聖エジディオ共同体(カトリック在家運動体=本部・ローマ)主催による「第38回世界宗教者平和のための祈りの集い」が9月22日から24日まで、フランスのパリで開催された。欧州を中心に世界5大陸から約5000人の諸宗教指導者、信徒が参集。立正佼成会から根本昌廣参務、アジア宗教者平和会議(ACRP)から篠原祥哲事務総長(世界宗教者平和会議=WCRP/RfP=日本委員会事務局長)が出席した。
同集いは、1986年に教皇ヨハネ・パウロ二世が世界の諸宗教指導者に呼びかけて、イタリア中央部にある聖都アッシジで実現させた「世界平和祈願の日」の精神(アッシジの精神)を継承していくもの。「アッシジの精神」は、日本においても「比叡山宗教サミット」として継承されている。
聖エジディオ共同体のマルコ・インパリアッツォ会長は、パリでの集いが、ウクライナや中東といった特定地域の戦争に焦点を当てるのではなく、「あまりにも強い武器の轟音(ごうおん)によってわれわれの耳に届かない多くの人々の声を伝え、平和への思いを強めるため」に開催されたと説明した。従って、『平和を想像する』というテーマは、諸宗教者の「平和への思いと創造性を高めていく」ことを意味する。
パリの国際会議場で執り行われた開会式には、同共同体と親交のあるマクロン仏大統領も参加。「他者を非人間視する戦争の前で、私たちのまなざしを人間化しよう」「他者を破壊する戦争の前で、共存するために他者の存在を認めよう」「われわれの創造的努力のみによって平和は生まれる。平和を想像しよう」という三つを提案した。アンヌ・イダルゴ・パリ市長も参加し、同市で開催されたオリンピックを振り返り、「ここ最近、パリでは平和へと導く可能性を持つ出会いと友愛の風が吹いた」と述べ、参加者たちを歓迎した。
開会式は、フランスで活動するアブラハム信仰(ユダヤ教、キリスト教、イスラーム)の指導者たちのスピーチを中心に展開された。同共同体と今回の集いを共催したカトリック教会パリ大司教区のローラン・ウルリッヒ大司教は、「オリンピック精神や、(5年前の大規模火災で被害を受けたノートルダム)大聖堂の再建といった理念のために、諸国が協力するならば、平和について想像することは可能だ」と述べた。
同国ラビ長(ユダヤ教)であるハイム・コルシア師は、「平和がないからこそ、私たちは、平和を想像しなければならない」と主張。パリの大モスク(イスラームの礼拝所)のシェムス・エディン・ハフィツィ院長は、同国の著名な作家であるヴィクトル・ユゴーの言葉を引用しながら、「人間が絶望に満たされている時、平和と許しについて話す以上に崇高な行為はない」と呼びかけた。英国国教会の最高指導者であるジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教は、「人々の絶望に目を向けよう。平和のために祈り、喜ぼう。なぜなら、絶望に未来はないからだ」と述べた。同共同体創設者のアンドレア・リカルディ教授は、「世界が分断されている時だからこそ、平和を想像することが必要であり、諸宗教が共存の意味を再発見しなければならない」と訴えた。