青少年が主役 全国各教会の取り組み

熊谷教会 「防災講演会」命を尊び、命を守る

講師の髙橋匡美さんが「あなたのふるさと、自分の家はどんなところですか? 今朝、家を出る時に、『いってきます。いってらっしゃい』とあいさつしましたか?」と投げかける。会場に集う青少年部員57人は、それぞれに思いを巡らせる。

熊谷教会が5月19日に行った青年の日「防災講演会」の一コマだ。講師を務める髙橋さんは、「東日本大震災 命のかたりべ」として活動している。

髙橋さんは続ける。

生まれ育った宮城県石巻市南浜町の緑豊かな街並みや、愛情たっぷりに育ててくれた両親との思い出、そして、震災3日後に訪れたふるさとの凄(すさ)まじい光景と変わり果てた両親の姿――。「私は2011年2月27日、母と買い物に出かけました。あれが母の笑顔を見る最後になるなんて思ってもいなかった」。

悲嘆にくれてうつ病を患い、生きる意味を見失いそうになったが、悲しい体験を語ることで生きる気力を取り戻し、かけがえのない命の尊さを伝える一助になるかもしれないと思うようになったと言う。「父母から受け継いだ私の命が、今、あなたの命と共にここにいる。でも、今ここにいる全員がそろって明日を迎えられることは奇跡だと、この震災で思い知らされました。みっともなくてもいい、這いつくばってもいい、今この一瞬を生きていこうと自分に言い聞かせています。自分の命を守って、共に生きていきましょう」と結んだ。

講演後、参加者はグループワークを行った。防災グッズをそろえ、避難所の確認をするとともに、「家族と過ごす時間や人との出会いを大事にしていきたい」といった感想が発表された。小学1年生の女児(6)は「学校で勉強を頑張りたい」と語った。

講演会は「熊谷教会発足65周年 いのちの森(生命の守り)プロジェクト」の一環として企画された。同プロジェクトのスローガンは『教会はあなたの家族。少年菩薩を育てよう。いのちと心を守る防災体制をつくろう!』。保科和市教会長は「普段から地域の人の心が輪になってつながり、助け合っているところは災害に強い。熊谷教会が、命を尊び、笑顔溢(あふ)れる家族、街をつくる心の発信基地、地域の防災拠点になっていければと考えています」と話す。

青年の日実行委員長の青年男子部長(33)は、「命の大切さ、尊さを学んだ上で、防災について考えなければならないと教えて頂きました。意見を言う前に反論されることを考え、結局何もできずに後悔することが多い私です。失敗を恐れず、自分の思いを表に出し、そこからいろんな方の意見を聞いて、部員さんと共により良い自分、より良い人生、より良い教会活動をつくり上げていきたいと思います」とかみしめた。

福知山教会 みんなでつくる未来を 「おかず総選挙」

福知山教会の写真は全て同教会が提供

「皆さまの一票をお願いします!」――。福知山教会青年部では、今年の春に会議を開き、有権者として、生活と密接に結びついている政治を正しく動かしてくれる政治家を見極めて投票する選挙の意義を皆で確認した。その上で、若者の関心を高めたいとの思いから、5月19日の「青年の日」を活用し、身近な「食」を題材にした模擬選挙「おかず総選挙」を行った。

これは、同教会の公式メニューをカレーと唐揚げのおかずから一つに決めるというもの。教会に所属する青年婦人部員の子どもが通う小学校で、給食のメニューを児童の投票で決める選挙が実際に行われたことに着想を得たという。

青年部員たちは事前に、「カレー党、からあげ党、選挙管理委員会」の三つに分かれた。

各党では、おかずの魅力や国連が定める「持続可能な開発目標」(SDGs)との関連性、おかずにちなんだ自らの実践目標を数カ月かけて考案した。その内容をポスターや政見放送の動画にしてSNS上で配信。選挙当日に向けて、教会や手どり先で出会う会員(有権者)にPRし、自らの党への賛同を求め続けた。

委員会では、投票案内状を作成し、支部長と協力して会員宅に配った。また、13日から18日までの期日前投票の期間に合わせて、投票用紙を作製。教会道場の一角に投票所も設営した。

19日午前、教会には青年部員を中心に会員112人が参集した。党首演説でカレー党党首の青年男子副部長(40)は、味のアレンジが可能で子どもから大人まで幅広く好まれ、さまざまな具材を無駄なく使えて食品ロスの削減に役立つことから環境にも優しいカレーの魅力を力説。カレーの鍋の中で柔らかく煮込まれた肉のように柔軟な人になるため、靴をそろえて心を整えたいと発表した。

一方、からあげ党党首の少年部長(34)が、子どもに大人気で冷めてもおいしく、弁当のおかずに最適な唐揚げの良さを強調。万人に受ける唐揚げを開発して世界中の皆が口にすれば心が満たされ、平和と公正がもたらされるとした上で、唐揚げのように皆を幸せにする存在になれるよう、笑顔で元気なあいさつを心がけると訴えた。

こうして迎えた午後、投開票が行われた。その結果、得票数は、からあげ党の57票とカレー党の55票。からあげ党が僅差で勝利した。両党の健闘をたたえ、場内は盛大な拍手に包まれた。最後に皆で、唐揚げ入りのカレーを賞味した。

参加者からは、「党首の演説を聴いて、なりたい存在に向かって自分も精進したいと思った」「試行錯誤しながら模擬選挙を運営してみて、実際の選挙の重大さがよく分かった。今後の投票には必ず行きます」などの声が上がった。

今回、責任者を務めた青年男子部長(46)は、「取り組みは、青年の皆が自分の発を大切にした人生を歩むきっかけとして楽しめたと思います。平等で平穏な社会づくりを担う一員として、自覚を持って歩むにはどうしたらよいかを、これからも皆で考えていきたい」と語った。

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