「広島でAI倫理について語ることは例外的な重要性を持つ――教皇」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
広島でAI倫理について語ることは例外的な重要性を持つ――教皇
ローマ教皇フランシスコは7月10日、広島県で開催された国際会合「平和のためのAI(人工知能)倫理:ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」に向けたメッセージを、バチカン記者室から公表した。
この中で教皇は、今年6月にイタリア南部で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の拡大会議で行った「AI倫理」に関するスピーチ(佼成新聞デジタル「バチカンから見た世界」159、160回参照)を引用。「機械は、より大きな可能性、限定された範疇(はんちゅう)、統計の結果を基盤に選択するが、人間は選択するだけでなく、決断をも下す」と主張し、機械と人間の違いを明らかにした。「決断は、一つの選択よりも重要(strategic)であり、実践的な評価を必要とする」からだ。
さらに、聖書や、政治判断の例を挙げながら、決断に必要である、人間にあり、機械にはない「叡智(えいち)」の重要性を指摘。「人間から、自身と、自身の生命に関して決断する能力を剝奪し、機械に選択を委ねるよう命じることは、人類を希望の無い未来に追いやる」と非難し、「機械の使用に関して、新時代に、人間の尊厳性を擁護していくための行動的努力を願う」と訴えた。
また、「(被爆地である)広島で、AIと平和について語ることは、大きな象徴的意味を持つ」と主張。「世界を動乱させ続けている諸紛争で、しばしば、そして悲しいことだが、まき散らされる憎悪とともに、この技術(の軍事利用)について耳にする」と語った。
さらに、「広島で開催された平和のためのAI倫理国際会合は、例外的な重要性を持つ」と強調。武力紛争が続く現在の世界でも、かつて広島に投下された原子爆弾と同じように、「自律型致死兵器システムの開発、使用を再考し、禁止しなければならない」と訴え、機械に人間の生命を奪う選択をさせてはならないと述べた。
最後に、教皇は、AI管理のために、「諸国民の文化と宗教の持つ豊かな伝統が、技術刷新の叡智ある管理のために重要な鍵となる」と語り、メッセージを結んだ。
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