「庭野平和賞奨励賞」第2回受賞者が決定 市民に身近で具体的な課題に取り組む2氏に

公益財団法人庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)はこのほど、「庭野平和賞奨励賞」の第2回受賞者をウェブサイトで発表した。受賞したのは、ミャンマーの環境平和活動家であるミンゾー氏と、一般社団法人在日ベトナム仏教信者会のティック・タム・チー会長(ベトナム寺院・大恩寺住職)。両氏には、正賞の賞状と副賞の賞金200万円が贈られた。

一昨年に新設された同賞は、宗教的精神を基盤とした平和のための活動と研究を通し、先駆的で萌芽(ほうが)的、実験的な活動に功績を挙げた個人(団体)を表彰し、さらなる発展を奨励するもの。地域に根差しつつ、市民生活に身近で具体的な課題に取り組み、人々の幸福と平和な社会を構築することも目的としている。

ミンゾー氏の出身地である、ミャンマー北部のイラワディ川デルタでは、2009年に国家主導のダム建設計画が持ち上がった。これは、河川流域の自然環境を悪化させ、それらの環境資源に依拠して暮らす人々の生活や文化を崩壊させる危険を伴うものだった。

これを受け、ミンゾー氏は、河川流域の住民や市民の問題意識を高めるため、川沿いに住む人々の生活を写真に収めて記事と共に発信。同時に、アーティストや作家などと協力し、ダム建設で想定される被害を視覚化する美術展をアートギャラリーで開催するなどした。これによって、次第にダム建設への懸念が高まり、計画の中止が決定された。

環境問題についての公開放送でディベートに参加するミンゾー氏(提供・DVB)

このほか、ミンゾー氏は、ミャンマーの自然環境の保全と民主主義に関する取り組みを展開。厳しい規制の中でも、自然と人間が調和した関係を築く大切さを訴えるユニークで平和的な活動は海外でも称賛された。こうした功績が受賞の理由となった。

一方、埼玉県本庄市にある大恩寺の住職を務めるタム・チー師は、外国人技能実習制度(当時)などで日本に滞在するベトナム人の支援を続けている。彼らの中には、低賃金や長時間労働を強いられるなど劣悪な就労環境に置かれたり、差別や暴力にさらされたりする人もいるという。

困窮する在日ベトナム人に、物心両面から支援して寄り添うタム・チー氏(写真右。提供・庭野平和財団)

タム・チー師は、食料などを手渡す支援に加え、生活に関する相談活動、命を落としたベトナム人の葬儀や葬送、厳しい職場環境から逃げてきた人々の保護、帰国のサポートなど、多様な支援活動を展開。これらは、在日ベトナム人の心身の依りどころとなっており、国内メディアでも多く取り上げられ、「ベトナム人の駆け込み寺」とも称された。タム・チー師の活動は、庭野平和賞奨励賞が評価する宗教的精神に基づく平和のための実践であるとし、受賞が決まった。

3月末、同賞の贈呈が受賞者の活動地域で実施された。その様子は、庭野平和財団のウェブサイトで紹介される予定だ。