本会一食平和基金「令和5年度運営報告」 総額1億8692万円を国内外事業に拠出

「親子で取り組むゆめポッケ」の一昨年の活動で集まったゆめポッケが、社会福祉と職業訓練のための全国協会(NISCVT)を通じてレバノンの子どもたちに届けられた(写真提供・同団体)

立正佼成会一食(いちじき)平和基金の令和5年度運営報告がこのほど、同基金運営委員会(委員長=齊藤佳佑教務部長)から発表された。昨年度の拠出総額は1億8692万3133円。2018年から23年の「中期運営方針」に沿い、「一乗精神」に基づく共生世界の実現のため、「貧困(飢餓)の解消」「教育・人材育成」に重点を置く7分野に活用された。

「人道緊急・復興支援事業」の一環として、認定NPO法人ジェン(JEN)は、アフガニスタンの子どもたちに学校給食を提供した(写真提供・同団体)

本会一食平和基金は、会員が、世界各地で貧困や紛争などに苦しむ人々の幸せを願い、月に数回、食事などを抜いて献金する「一食を捧げる運動」(一食運動)の浄財で運営されている。

同基金が目指すのは、万物が大いなる一つのいのちに生かされた尊い存在であるという仏教の教えに基づき、互いを共に生かし合う「一乗」の世界の実現だ。これまでに、貧困の解消や、紛争、災害に起因する人道危機に対する緊急支援などの諸活動を、国連機関やNGOなどと共に展開してきた。

昨年、国連世界食糧計画(国連WFP)など五つの国連機関から共同で発表された報告書によると、世界の飢餓人口が約7億3500万人に上り、このうち約1億2200万人が、新型コロナウイルスの流行や気候危機、各地の紛争によって、2019年以降に増加した人々だという。この傾向が続くと、「持続可能な開発目標」(SDGs)最終年の30年に、飢餓に終止符を打つことはできないだろうと警告した。

これを受け、同基金運営委は「貧困(飢餓)の解消」の分野で、昨年に活動終了となった「アフリカへ毛布をおくる運動」や、国連WFPの「ミャンマーにおける学校給食プログラム」に計1721万3956円を拠出。この中で、「アフリカへ毛布をおくる運動」では、最終年に収集された毛布2万2172枚をモザンビークとマラウイの人々に配付するための輸送費などに浄財が役立てられた。同運動では、39年間で、27カ国に422万9744枚の毛布が届けられた。

マラウイ赤十字社(MRCS)による「学校給食プロジェクト」では、給食の食材となる野菜の栽培事業も行われ、小学生の親が菜園で働く機会を創出している(写真提供・同団体)

また、同運営委では、貧困の根本的解消には経済援助のみならず、文化や宗教の違いを受け入れて信頼関係を醸成する人材の育成、世界中の人々が少欲知足の生活を送る姿勢を育む取り組みの両方を重視。この観点から、「教育・人材育成」では、「親子で取り組むゆめポッケ」「カンボジア仏教研究復興支援事業」など7事業に計3174万553円を活用した。

このうち、通関手続きなどが困難なため活動終了となった「親子で取り組むゆめポッケ」では、22年度の取り組みで集められた1万4558個のゆめポッケが、フィリピン・ミンダナオ島とレバノンの子どもたちに配付された。また、今年から、「ゆめポッケ」に込められた精神を引き継ぎ、子どもたちが主体的に一食運動の実践に取り組む「いちじきキッズチャレンジ『ドリーム・ギフト』」がスタートした。

さらに、「緊急救援・復興支援」では、昨年10月以降のパレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラーム過激派組織ハマスの軍事衝突で発生した人道危機に対して拠出を行ったほか、昨年2月に発生したトルコ・シリア大地震による被害など合わせて5件の緊急事案に合計で4681万5000円を支援した。

また、温かな社会づくりに寄与するため、本会の教会が主体的に献金を活用する「一食地域貢献プロジェクト」に91教会が参加。子ども食堂の運営母体や障がい者施設など178団体を支援した。生活に困窮する韓国残留日本人女性を保護する慶州ナザレ園への助成も実施された。