第41回庭野平和賞贈呈式 「平和と正義のためのサラーム研究所」創立者 モハメド・アブニマー博士(動画あり)
公益財団法人庭野平和財団による「第41回庭野平和賞」贈呈式が5月14日、東京・港区の国際文化会館で行われた。受賞者は、パレスチナ系アメリカ人のムスリム(イスラーム教徒)で、「平和と正義のためのサラーム研究所」創立者ならびに所長のモハメド・アブニマー博士(61)。イスラームは赦(ゆる)しと和解を説く宗教であるという理念のもと、世界の紛争地域で諸宗教間・民族間の対話による平和構築に取り組んできた。贈呈式では、宗教者や識者132人が見守る中、庭野日鑛名誉会長から賞状が手渡された。
アブニマー博士は、イスラエル北部ガリラヤ地方の出身。キリスト教徒とムスリム、イスラームの一派ドゥルーズ教徒が共存する村に生まれた。祖父やおじはムスリムの地域指導者として村内の争いごとの調停役を担い、博士はその影響を受けて育った。
ヘブライ大学学士課程(社会学、教育学)、修士課程(教育学)を修了。この間、同国でアラブ人とユダヤ人の対話による関係改善に取り組んだ。1989年に渡米し、ジョージ・メイソン大学博士課程で紛争解決学を修めた。以来、イスラームの原則である和解、赦し、非暴力の探究に取り組み、平和に対するイスラームの姿勢について神学的理解を促進してきた。97年には、アメリカン大学(ワシントンDC)国際学部の国際平和・紛争解決学科に入職した(2007年から教授=現職)。
研究と教育の傍ら、世界の紛争地域に赴き、紛争解決や平和構築、諸宗教間対話に従事。紛争の続く北アイルランド、スリランカ、ニジェール、スーダン、イラク、パレスチナなど多数の国・地域で、宗教指導者や地域リーダー、若者に向けた紛争解決トレーニング、諸宗教間対話のワークショップを行ってきた。96年には、パレスチナ自治区ガザで最初の紛争解決・コミュニティー調停センターの設立に貢献した。
また、米国同時多発テロ事件を機に、西側諸国を中心として「イスラーム恐怖症」が広がる中、2003年にイスラームと平和構築に関する世界初の本格的な手引書『イスラームにおける非暴力と平和構築――理論と実践(仮邦題)』を出版。10年にわたる研究の成果をまとめ、イスラームへの誤った認識の改善に尽くした。
さらに同年、世界のムスリムと諸宗教の人々を結ぶ「平和と正義のためのサラーム研究所」(ワシントンDC)を創立した。同研究所では、平和教育や平和のための宗教教育に焦点を当て、アラブ地域などで大規模なプロジェクトを展開。ムスリムコミュニティーの人々が自ら紛争解決に取り組んでいく力を身につけられるよう、地域の宗教指導者と連携し、イスラーム宗教学校でイスラームの平和観をはじめ、非暴力、平和的共存、宗教の多様性、ジェンダー平等などについての教育を導入する取り組みを進めている。
13年から8年間、「アブドッラー 国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)の上級顧問も務めた。