『移民と難民』テーマに バチカンで第3回「行動の倫理」会議
ローマ教皇庁科学アカデミー、同社会科学アカデミー、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会による第3回「持続可能で不可欠な開発に向けた行動の倫理」会議(通称=「行動の倫理」会議)が5月25、26の両日、バチカン庭園内「ピオ四世のカッシーナ」で行われた。テーマは『移民と難民』。WCRP/RfP国際共同議長を務める庭野光祥次代会長が出席し、仏教徒の立場からスピーチを行った。
会議には、同科学アカデミー会長のマルチェロ・サンチェス・ソロンド司教などの諸宗教指導者をはじめ、WCRP/RfP国際委のウィリアム・ベンドレイ事務総長、国連事務総長特別顧問のジェフリー・サックス博士ら経済学者、政治家、研究者約40人が参加した。
同会議は、ローマ教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」を受け、昨年10月に第1回を開催。「気候変動」「貧困」「移民」など人類の直面する八つの課題に対して、各分野の指導者や専門家が協働し、グローバルな視点から解決に向けた行動を促進する。2年間で8回の会合を開き、同国際委が運営と資金の支援を行う。
25日の会議では、『大量移民と難民の危機――政治的、経済的、環境的要因』『移民と難民への政治的対応』『フランシスコ教皇による移民と難民への対応』『“出会いと連帯”――現地での経験』をテーマとした四つのセッションを実施。移民・難民の歴史、発生するメカニズムなどが紹介されたほか、国際社会や宗教組織による難民支援のあり方について意見が交わされた。
翌26日、『移住と難民に関する宗教的視点Ⅱ』と題したセッションで、光祥次代会長がスピーチした。東京電力福島第一原子力発電所の事故により避難を余儀なくされた人々が、避難先でいじめや差別を受けることがある事実に触れ、難民や環境問題を解決するには法律の整備だけでなく、人の心の中に「道徳観」「倫理観」を育むことが重要と指摘した。
その上で、宗教者が自分の宗教の正当性や正義にのみ固執することなく、全ての人が受け入れられる言葉で「人間の道徳」「人間の倫理」を説くことができれば、世界は変わっていくと強調。行動する倫理のロールモデルとは「利他を説く宗教者が、実践に裏打ちされたメッセンジャーになること」と語った。
会議ではこのほか、WCRP/RfP国際委と国連児童基金(ユニセフ)の共同事業「恐れを超えた信仰」キャンペーンについて、ベンドレイ同国際委事務総長、国連児童基金(ユニセフ)のリザ・バリー市民社会パートナーシップチーフから説明がなされた。
同キャンペーンでは、信仰を持つ家族が差別や偏見を乗り越え、異教徒の難民を家庭や共同体に受け入れるまでを記録した映像を特設サイトで公開する。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を介して世界中の閲覧者と情報共有し、難民支援への環境を整えるほか、全ての信仰コミュニティーとの連帯を深めることが目的だ。
バリー氏は発表の中で本会の協力に対し謝意を表した。会議後、キャンペーンの開始に伴い、協働団体の代表として光祥次代会長へのインタビューが行われた。収録内容(動画)は、特設サイトに公開される。