中央学術研究所から『大乗仏典思想叢書』第9号が発刊 仏教思想研究発展に貢献

大乗仏典思想叢書第9号は『妙法蓮華経』原典研究に資する資料として活用が期待される

立正佼成会中央学術研究所はこのほど、『妙法蓮華経』の原典(底本)研究に資する『Philosophica Mahāyāna Buddhica Monograph Series(大乗仏典思想叢書=そうしょ=)』の第9号『梵文(ぼんぶん)法華経「ケルン・南條校訂本」ローマ字本・脚注補完 第3分冊』を発刊した(同8号第2分冊は2023年に既刊)。同研究所学術研究室の西康友主幹が編纂(へんさん)した。

この度、発刊された第9号は、梵文法華経研究の標準・基準テキストである『ケルン・南條本』の脚注を補完するもの。『ケルン・南條本』は、ケルン(Johan Hendrik Caspar Kern, 1833-1917年)と南條文雄(1849-1927年)の両⽒による梵文法華経写本を⽤いた初の校訂本で、5分冊として刊⾏された。複数の梵文法華経写本を用いて編纂された初の校訂本だが、発刊当初から、脚注の不備や、異なる書写年代・出土地域を区別しない写本の校合など、編纂上の問題が指摘されていた。

本書はこの問題を解決する⼀助となるものであり、『ケルン・南條本』第8章pañcabhikṣuśatavyākaraṇa(「妙法蓮華経五百弟⼦受記品第⼋」に相当)から第13章sukhavihāra(「妙法蓮華経安楽⾏品第⼗四」に相当)の脚注を補完。今後の梵文法華経研究や梵文法華経写本を用いた校訂本編纂のために必要不可欠な資料となる。

また同号の発刊は、西主幹が文部科学省の外郭団体「日本学術振興会」から科学研究費として助成を受けた研究課題「梵文法華経諸問題解明のための基盤テキスト構築『ケルン南條本』校訂へ向けて」(JP21K00058)に関連した最も主要な研究成果と言える。

同研究所は、仏教経典の解読や研究の資料として同叢書が広く活用されることを願い、ウェブサイトで全ページを世界へ向けて公開している。PDF版は以下のURLから入手できる。

https://www.cari-saddharmapundarika.com/philosophica