第41回庭野平和賞 米国「平和と正義のためのサラーム研究所」創立者のモハメド・アブニマー博士に
「第41回庭野平和賞」の受賞者が、米国「平和と正義のためのサラーム研究所」創立者でアメリカン大学国際学部教授のモハメド・アブニマー博士(61)に決まった。公益財団法人庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)が2月27日、京都市内のホテルで記者会見を開き、席上、庭野理事長が発表した。
庭野平和賞は、宗教協力を通じて世界平和の推進に顕著な功績をあげた個人や団体に贈られる。世界70カ国、約400人の識者、宗教者らが推薦した候補者の中から、庭野平和賞委員会の審査によって選ばれる。
受賞が決まったアブニマー博士は1962年、イスラエル北部ガリラヤのパレスチナ人家庭に生まれたアラブ系ムスリム(イスラーム教徒)。エルサレムのヘブライ大学在学中にファシリテーターの訓練を受け、アラブ人とユダヤ人のコミュニティー間の対話による平和構築に携わった。89年に渡米し、ジョージ・メイソン大学で紛争解決学の博士号を取得。以降、北アイルランドのカトリックとプロテスタント間の対立、スリランカの仏教徒とヒンドゥー教徒間の紛争をはじめ、フィリピン・ミンダナオ島、バルカン半島、アフリカやアラブ諸国での諸宗教間対話、宗教的多元主義の問題解決に尽力してきた。
2003年には「平和と正義のためのサラーム研究所」を創立。イスラームにおける赦(ゆる)しと和解の研究と実践に注力するとともに、ムスリム間、諸宗教間の対話のプラットフォームづくりに寄与している。また、イスラームと平和に関する世界初の本格的な手引書『イスラームにおける非暴力と平和構築(仮邦題)』(2003年)を発刊。近年は教育による平和構築を目指し、対話、和解を促進するためのトレーニングやワークショップなどを通じ、対立を超える道を次世代に示している。
同平和賞委員会のフラミニア・ジョヴァネッリ委員長(ローマ教皇庁「人間開発のための部署」元次官、NPO団体オ・ヴィヴェイロ・オンルス会長)は贈呈理由の中で、アブニマー博士の功績を「紛争解決と平和構築の実践を教育に結び付けた包括的な平和貢献」と称賛。その上で、「イスラームの原則である和解、赦し、非暴力の探究に多大な貢献を果たし、平和に対するイスラームの姿勢について、その神学的理解の促進に寄与してきた」とたたえた。
贈呈式は5月14日、国際文化会館(東京・港区)で行われ、賞状と顕彰メダル、賞金2000万円が贈られる。