WCRP日本委「新春学習会」 ICRC、UNHCRの両駐日代表が基調講演

新春学習会では基調講演の後、パネルディスカッションが行われた

『人道危機において、国際機関が宗教者に期待すること』をテーマに、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の「新春学習会」が1月25日、立正佼成会の法輪閣(東京・杉並区)を会場に、オンラインを併用して催された。各教団の宗教者や賛助会員ら約150人が参加した。

同学習会は、世界各地で生じる武力衝突による人道危機に対し、宗教者が取り組む紛争和解や被害者支援の意義と課題、果たすべき役割を踏まえ、国際機関とのパートナーシップの在り方を探究することが目的。当日は赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表の榛澤祥子氏と、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表の伊藤礼樹氏が基調講演に立った。

基調講演に立つ榛澤氏 

この中で榛澤氏は、パレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニスの様子を写真で紹介しながら、人間の命が危機に瀕(ひん)する現地の悲惨な状況を説明。医療施設は不衛生で、感染症が避難民のコミュニティーで急速に広がり、特に子どもや障がいのある人、妊婦、高齢者といった弱い立場にある人が大きな影響を受けていると強調した。その上で、ICRCの活動原則である「公平・中立・独立」に言及 。中でも、敵味方の区別なく全ての人を救うには「中立」であることが最重要であり、「中立」であるがゆえに紛争当事者から信頼され、支援を必要としている人々へのアクセスが可能となり、生命、尊厳の保護や必要な支援を提供することができると話した。

また、国際人道法を挙げ、人道支援の根本には慈しみの実践があり、それは全ての主要な宗教に共通すると指摘。「国際人道法を宗教者の皆さまが理解し、国際人道法や人道原則を普及・強化させていくことはICRCにとっての鍵」と述べ、人道支援に対する宗教者の行動に期待を寄せた。

難民・避難民の推移を提示する伊藤氏

一方、伊藤氏は、世界の難民・避難民の推移をグラフで提示。その数はシリア内戦が起きた2011年以降に急増しており、現在1億人を超えていると報告した。そして、自身が難民キャンプに足を運び、状況を見聞きする中で感じたことを踏まえて宗教者への期待や提案を詳述。その一つに、難民を受け入れているコミュニティー内での仲裁役を掲げた。避難生活の長期化に伴い、受け入れ側と難民との間で宗教の違いによる摩擦が徐々に生じ、相手を拒絶する動きが起き始めると説明。そうした時、道徳観や倫理観を持つ信頼のおける宗教者が間を取り持ち対話を重ね、互いの違いを受け入れて摩擦の低減につながった事例を紹介し、宗教者と協力して難民を受け入れる寛容な環境を整えていきたいと語った。

この後、榛澤氏、伊藤氏に加えて黒住宗道同日本委理事(黒住教教主)、本多端子同日本委女性部会委員(全日本仏教婦人連盟理事)、大西英玄同日本委理事(北法相宗音羽山清水寺成就院住職)が登壇し、パネルディスカッションが行われた。山本俊正同日本委理事(元関西学院大学教授)がコーディネーターを務めた。

当日の様子(クリックして動画再生)

このうち、大西師は、榛澤氏と伊藤氏の講演に触れ、慈しみの実践や、倫理観、道徳観といった人としての普遍の価値を宗教者が広く伝える必要性を感じたと発表。異業種の交流や対話にも積極的に努めていきたいと決意を話した。その上で、両氏に、宗教活動や善行に興味関心のない人への伝え方、組織が健全にネットワークを広げていくための注意点について質問した。

これに対し伊藤氏は、UNHCRで毎年実施する映画祭を例に挙げ、人々が参加しやすい入り口を多くつくることで、人道支援について興味を持ってもらえるようになるのではないかと回答した。

榛澤氏は、SNSを活用して若者の気持ちを引きつけることも今の時代には必要と強調。その際、誤情報が拡散する速さと及ぼす影響の危険性を説明し、情報を伝える前に一度その情報が正しいのか確認することが非常に大事と回答した。

最後に、武藤謙一同日本委理事(日本聖公会首座主教)が閉会挨拶に立ち、今後も国際機関と協力し、宗教的立場から人道支援に携わっていきたいと述べた。